the Cat Met with Special Boxes.

第4話 視覚素子は笑う INTERCEPTER

しかくそしはわらうThe Visual Device will Laugh

粗筋

トグサの元に警察本庁の元同僚から連絡が入る。
その警察官はその夜、ハイウェイで謎の死を遂げてしまう。
彼から警察庁本部に不振な動きがあるとの情報を得たトグサは、荒巻より独自の操作を命ぜられる。
そんな時、葬儀会場で死んだ彼の妻から封筒を渡される。中身は一見なんの変哲も無い写真だった・・・


登場人物

用語

セリフ

山口「これもだ・・・どうなってるんだ・・・?」
丹生邦彦山口。」
山口「丹生・・・主任・・・どうしたんですか?こんな時間に・・・」
丹生邦彦「ふふっ・・・失礼な奴だな。仕事をしてたんだよ、仕事を。お前こそまだやってたのか?」
山口「ええ・・・」
丹生邦彦「どうだ一杯・・・たまには付き合えよ。」
山口「いえ・・・今日は失礼します。」

complex episodes:視覚素子は笑う INTERCEPTER※1

トグサ「はい。」
山口「ああ、本庁で同期だった山口だけど、覚えてるか?」
トグサ山口・・・?おお!どうしてた?久しぶりだな。」
山口「こんな時間に突然すまんな。でも、どうしてもお前に相談したい事があるんだ。今から会えないか?」
トグサ「これからか?あ・・・構わんが、何かあったのか?」
山口「お前、笑い男事件、覚えてるか?」
トグサ笑い男・・・ああ、マイクロマシンメーカーの社長を誘拐して身代金を要求した企業テロだろ?6年前の。」
山口「俺は今、そこの特捜部にいるんだが、どうやら身内に不審な動きがあってな。」
トグサ「刑事同士の縄張り争いか?」
山口「違う!恐らくもっと上だ。頼む、これ以上は会って話したい。1時間位で着くよ。」
トグサ「分かった。待ってるよ。」
山口「すまん。」

山口「ああっ・・・!俺の目にも、インターセプターが!?」

イシカワ「ん?何だ、トグサは徹夜か?」
サイトー「ああ、昨日から人を待ってたとかでな。ん?何だ?その箱は。」
イシカワ「これか?バトーの新しい筋トレグッズだ。」
サイトー「あいつまた買ったのか。」
イシカワ「奴みたいなサイボーグが、何処を筋トレするのか知らねえけどな。」
サイトー「ちげえねえ。他に金の使い道はねえのかよ・・・おお、目覚めたか。」
トグサ「夜の首都高速・・・警察官黒焦げだって!?」

荒巻大輔「確かなのか?その事故死した刑事から、夕べ連絡があったと言うのは。」
トグサ「はい。本庁上層部に不審な動きがあるとかで、俺に相談したいと。」
草薙素子「それと彼の死が関連している?」
トグサ「確証はありません。が、タイミングが良過ぎます。」
荒巻大輔「鑑識課の結果は?」
トグサ「視界不良による不慮の事故ではないか、と。」
草薙素子「単なる事故である可能性も十分にある訳ね。」
トグサ「が、しかし・・・!」
荒巻大輔「話は最後迄聞け。例えそうであったとしてもだ、お前の元同僚が何かを掴んだのならそれを確かめておく必要がある。3日やる。その間に何か見つけてこい。」
トグサ「有難う御座います!」

荒巻大輔笑い男事件か・・・どう思う?」
草薙素子「今の今迄すっかり忘れてたわ。特別捜査本部はまだ解散してなかったのね。」
荒巻大輔「脅迫を受けた会社の数だけで言えば戦後最大といえる規模の企業テロだからな。世論の手前、本庁としてもそう簡単に引き下がる訳には行くまい。」
草薙素子「その割にはのんびりしてるわね。」
荒巻大輔「上層部でも未だ犯人に対する見解が割れているそうだ。電脳化義体化技術を推し進める多国籍企業に敵対する過激派説、企業間競争から生じた陰謀説、純粋な金目当ての恐喝説等様々だ。しかも国籍・性別・推定年齢はおろか、単独犯なのか複数犯なのかすら特定出来ずにいるのだからな。唯一つ意見の一致をみているのは、犯人が特A級のハッカーであると言う事だけだ。」
草薙素子「特A級といっても最初だけね。その後のは結構凡庸だと思うけど。正直言ってあの事件、犯人像も含めて好きになれないのよね。」
荒巻大輔「うむ。だが、本庁の上層部が何か企んでいるとなれば、我々の出番と思わんか?」

僧侶の読経。

山口の妻「トグサさん、ですか?初めまして、山口の妻です。」
トグサ「ああ。この度は・・・」

トグサ「でも、どうして俺の事を?」
山口の妻「主人から、お話は伺っておりましたので。実はトグサさんに、これをお渡ししようと思いまして。今朝、主人から届きました。中に手紙が入っていて、トグサさんにお渡しする様にと。」
トグサ「俺に?ちょっと拝見します。
トグサ「あの、本当にこれで間違いありませんか?」
山口の妻「ええ・・・と、思いますけど・・・」

トグサ「次。次。次。次。22から56へ。次。次。35から28へ。次。次。次。 」
トグサ「はあ、何なんだ?これ。山口の奴、俺に何を見せようとしていたんだ?」
トグサ「内のもたまにやってんな、これ。そうだ、内に連絡入れとかなきゃ。」
トグサ「ああ、俺だけど、今日も帰れそうにないんだ。ああ、ああ、そうか。戸締りだけは気を付けてな。ああ、頑張るよ。じゃあ、おやすみ。」
トグサ「さて、顔でも洗ってもう一回見直すか。」

トグサ「はあ・・・あと2日で足りるのか?」
トグサ「待てよ!?」

トグサ「C97を、35から28へ。ない。C98を。やっぱりそうだ。C96を。これも!C92。4から13へ。42から30へ。これもだ!これも。この写真には、みんな、カメラがない!」

深見「で、公安9課のエリートさんが、何の用だい」
トグサ山口の通夜に来てなかっただろ?久しぶりに会えると思ってたんだが。」
深見「色々と立て込んでてな。あいつの上さんに会ったか?」
トグサ「ああ。」
深見「馬鹿な奴だ。あんな若くて美人の上さんを残して。」
トグサ「大変らしいな、特捜部は。」
深見「ああ、笑い男事件か。みんな、寝ずにやってるよ。」
トグサ「解決の見通しは?」
深見「尋問染みて来たな。」
トグサ「いや、支障があるんなら答えなくてもいいさ。」
深見「いいよ、別に。お前に黙ってたって、簡単に調べられそうだしな。実はここに来て、新しい重要参考人が浮かび上がって来てな。」
トグサ「今迄何百人と居たんじゃないのか?」
深見「今度のは別だ、間違いない。セラノに対しても恨みを持ってる」
トグサ「セラノ?」
深見セラノ・ゲノミクス笑い男事件で最初に標的にされたマイクロマシンメーカーだよ。」
トグサ「その容疑者の逮捕は近いのか?」
深見「いや。上が及び腰になっててな。だが今度は状況証拠も揃っている。あとは決定的な瞬間を押さえるだけさ。」
トグサ「どうやって?」
深見インターセプターさ」
トグサインターセプター?3ヶ月前に知覚傍受法の改正で導入された視聴覚素子の事だな。」
深見「そうだ。あれを容疑者に仕掛けられれば必ず尻尾を押さえられる。何せ、3ヶ月間行確要らずだからな。何かの医療機関にさえ行ってくれりゃあ、その時に仕掛けられる。そうなりゃプライベートなんてありゃしねえ。奴のションベンの放物線迄確認出来る。」
トグサ「ん?今、何て言った?」
深見「ん?ションベンの、放物線?」
トグサ「それだ。」

荒巻大輔「成る程、インターセプターか。」
トグサ「はい。山口の写真は全て、このインターセプターを仕掛けられた笑い男事件特捜部の捜査員達の目線である事が分かりました。」
荒巻大輔山口が言った、本庁上層部の不審な動きと言うのはその事だと?」
トグサ「はい。」
草薙素子「でもインターセプターその物には違法性は無く、書類さえ提出すれば警察関係者なら誰でも使用する事が出来る筈よ。」
トグサ「ですが、書類の提出は確認出来ませんでした。当然、法律で義務付けられている、第三者の立会いもありません。深見の話では、特捜は笑い男事件の容疑者にインターセプターを仕掛けるチャンスを見計らっていたようですが、県警の記録を見る限り、署内の健康診断時に、何故か彼等特捜の目にインターセプターが仕掛けられたものと思われます。」
バトー「勤務態度を観察する為にしちゃあちょっとやり過ぎだな。大体、インターセプターを納入してるのってセラノ・ゲノミクス社なんじゃなかったっけ?」
イシカワ「事件の被害者であるメーカーの製品を警察が制式採用した。何か裏がありそうだな。」
トグサ「しかも、瀬良野社長に張り付いている深見の目にもこのインターセプターは仕掛けられていて、セラノサイドも刑事達も、その事に全く気付いていません。」
草薙素子「お友達にしては仲が悪そうね。」
荒巻大輔「ピースは揃ってきたな。」
バトー「待てよ・・・って事は、トグサの動きも筒抜けになってねえか?」
荒巻大輔「うむ。出来れば早急に動きたい所だが正面から行くには土産が足りんな。」
草薙素子「少し揺さぶりかけてみる?」

ベロニモ「悪いがまだ店開けてないんだがな・・・ん・・・?誰だ・・・?」
草薙素子「あたしよ。」
ベロニモ「ヒャア!」
ベロニモ「姐さんか、おどかすない。」
草薙素子「相変わらず臆病ね。義体が泣くわよ。」
ベロニモ「態々そんな嫌味を言いにここへ?」
草薙素子「まさか。このネタをあんたの所へ出入りしている記者に流して欲しいの。分かってるだろうけど、お上の息がかかったメディアじゃ駄目よ。」
ベロニモ「生憎と、そういう上客にはとんとお目に掛かって無いね。」
草薙素子「あらそう。じゃああんたの垂れ込みって事で、電警にはここが情報テロのサーバーになってるって伝えとくわね。」
ベロニモ「相変わらず目の覚めるジョークがお好きで。」
草薙素子「分かってくれて嬉しいわ。報酬はいつもの方法で現金払い。」
ベロニモ「毎度どうも・・・お?」
草薙素子「じゃあ頼んだわよ。」
ベロニモ「帰るのか。一杯位飲んでけばいいのに・・・」
草薙素子「薄まってないお酒があるの?」
ベロニモ「手厳しいね・・・」

記者「丹生さーん!法改正で導入されたインターセプターが、警察内部で不正使用されているっていうのは本当ですか?」
丹生邦彦「おー?何を言っているんだ?」
記者「特捜刑事達の目にインターセプターが仕掛けられているって噂なんですがねえ?」
丹生邦彦「誰がそんな事を言ってるんだ!」
記者「ああ、質問に答えてくださいよ。」
丹生邦彦「知らん!勝手な事をしてると、しょっ引くぞ!」
記者「あ、丹生さん、カメラ・・・」
丹生邦彦「うるせえ!」
記者「マイカーで出勤しないんですか?」
丹生邦彦「うるせーんだよ!」
記者「丹生さーん・・・」

大堂「どうもあの石頭の荒巻が糸を引いているようです・・・もちろん手は打ってあります・・・ええ、やむを得んでしょう・・・なに、警部クラスの退職金程度ですよ・・・そう言って頂けると・・・実は家内が、オランダが用意した物件では不満だと言い出しましてねえ・・・へへへ、まったく・・・それでは明日、会見はこちらで。」

アナウンサー「一部新聞等で取り上げられた、新浜県警特別捜査本部内における視聴覚デバイス不正使用疑惑事件は、本日警視庁において警視総監自らによる記者会見と言う異例の形に発展しました。」
トグサ「総監自ら会見を開くって?」
草薙素子「想像してたより過剰な反応ね。」
荒巻大輔「彼は笑い男事件発生当時、県警本部長だった男だ。どうやら警察内部にはどうしても隠しておきたい何かがある様だな。」

刑事「それでは記者会見を始めます。」
大堂「えー、先日一部週刊誌等で報じられたインターセプターの不正使用疑惑で知覚傍受法違反があったのではないかと言う件につき、早急に内部調査を行った所、県警本部主任、丹生邦彦刑事課長が、事件への関与を認める発言を致しました。同刑事課長は、笑い男事件の捜査に行き詰っており、各捜査員の電脳インターセプターを仕掛け、情報を収集しようとしたものと思われます。本人も度重なる心労から常識的分別を欠き、この様な行為に至った事を認め反省しております。とは言え、同刑事課長の行為は職務を逸脱した行為であると言わざるを得ず、本日付を持ち、同刑事課長を懲戒免職処分にすると共に、事件の捜査に当たっておりました捜査員、及びその家族の方々に深く陳謝するものであります。」
記者「上層部の責任問題は?」
大堂「近く長官より発表があるかと思います。」
記者「上層部とセラノとの癒着も取り沙汰されてもいますが?」
大堂「導入に関しては法の範囲内であると認識しており、採用にあたっては正式な入札制に則ったものだと聞いています。」
記者「答えになってないよ!知覚傍受法の改正を要求したのは、あんたらじゃないの?」

バトー「ハン!」

記者「総監!引退後はオランダに移住されるようですが、オランダといえばセラノの親会社がありますよねえ。やはり何か関係があるのでは?」
大堂「そんな個人的な事迄答える義務はない!」
記者「無いとはどういう事ですか?」

バトー「やれやれ・・・ん?おい、何かカメラの動き、おかしくねえかよ。」

刑事部長「相変わらずですね、大堂総監。初めまして、ですけど、僕が誰だか分かりますよね?」

荒巻大輔「あれは・・・!」
バトー「どうなってんだ?おい。」

警察幹部「お、おい!どうしたんだ竹川!」
刑事部長「僕はね大堂さん、最早貴方達の世界に関わるべきではないと考えていたんですよ。その掃き溜めの様な世界に付き合っていると、本当に嫌になっちゃうんだ。だから、あんたらの茶番劇にだって、あれからずっと口出ししなかったでしょ?全部解ってたのに。言ってみれば、大いなる無駄に疲れちゃったんです。残念ながら。」

イシカワ「おい、見てたろ、あの刑事部長。電脳バトー「しっ!」

刑事部長「でもね、今日のは酷いよ、酷過ぎる。こんな茶番なのに、ちっとも笑えませんよ。だから極めて不本意だけど、僕はまた、貴方方に挑戦しなくちゃならない。3日後、茶番劇団の卒業生達と同窓会をしますよね?そこで今度こそ、本当の事を話して下さい。今度また嘘っぱちの演技をしたら、貴方をこの舞台から消去しなくちゃあならない。」
警察幹部「おい竹川!救急車だ、救急車を呼べ!」
アナウンサー「会見の途中ですが、一旦スタジオに戻ります・・・会場の桜井さん」

トグサ「本物か?」
荒巻大輔少佐、すぐに状況確認だ。」
草薙素子「了解!」


脚注
※1:intercepter 妨害者、途中で奪う人、障害物の意。軍事用語で要撃(迎撃)戦闘機を指す。

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