the Cat Met with Special Boxes.

第7話 偶像崇拝 IDOLATER

ぐうぞうすうはいIdolatry

粗筋

南米の麻薬王マルセロが、頻繁に出入国を繰り返しているらしいとの情報が寄せられ、公安9課に捜査要請がなされる。
暴力団組織と接触するマルセロ。
彼の目的はなんなのか?やがて暴力団を検挙しようとしていた地元警察も介入し、事態は四つ巴の様相を呈し始める。
そして草薙はついにマルセロの秘密を発見するのだが・・・


登場人物

用語

セリフ

アナウンサー「本日、ジェノマ人民主革命の指導者にして現軍事顧問のマルセロ・ジャーティ氏が、パナン市内で銃撃を受けて暗殺されました。事件は本日未明、宿泊先のホテルを顧問団と共に訪れていた所を襲撃されたもので、その銃撃戦の規模から見てマルセロ氏の死亡はほぼ確実と見られています。」
草薙素子「民主革命の指導者にして伝説の英雄。現議長と共にゲリラ戦を指揮して、革命を成功に導いた最大の功労者。しかし革命後、政治には一切興味を示さず、国家評議会議長を影から支える一介の軍人である事を身上とし、今も近隣の国々で革命の指揮を執っているとも言われる。SASやデルタが仕掛けた5度の暗殺計画からも、その度に奇跡的に生還し、本国では彼の事を不死身の英雄として疑う者はいない。」
観察官「出てきました。奴です。」
草薙素子「観察官、スキャンを。」
観察官「歩行パターンは、両ひざ下を義体化したものです。同じく義体化した右腕を無意識に撫ぜる動作は明らかに幻肢の症状で、ゴーストの存在を示す有力な外見的特徴です。その他いくつかの行動パターンを欧州警察のデータバンクと照合した結果、マルセロ・ジャーティであると判定します。」
草薙素子伝説の英雄が、これ程頻繁に入国を繰り返していたなんて・・・」

草薙素子トグサ、これからマルセロの尾行に移るわ。13分後に交代して。
トグサ:了解。

a stand alone episode:偶像崇拝 IDOLATER※1

アナウンサー「先頃報じられた、ジェノマ人民軍顧問マルセロ・ジャーティ氏が銃撃された事件で、政府は公式に氏が無事である事を表明しました。政府の公式発表によりますと、マルセロ氏は右腕に負傷はしたものの」
バトー「みんな影武者に踊らされやがる。」
荒巻大輔「これで6度目の暗殺未遂だ。その対象が全て影武者だったと言うだけの事だろう?」
バトー少佐が追ってるのが本物だと言う確証は?」
草薙素子「確証なんて無いわ。あるのは確率の問題。」
バトー「行動観察官のはじき出したデータでは本物と?」
草薙素子「それも確率の問題。」
バトー「めんどくせえ。ゴーストハックでも仕掛けてはっきりさせりゃいいのに。」
草薙素子「空港からマルセロの乗ったタクシーをトグサがつけているわ。そろそろ連絡が入る頃ね。」
荒巻大輔「まずは確実に潜伏先を突き止めろ。そこからは二十四時間の行確に移れ。マルセロは過去5年間で12度、しかもほぼ5ヶ月に一度の期で来日を繰り返していたそうだ。当局はその事に気付いていたそうだが、外事第一課では国内での行動についてその殆どを把握出来ていない。」
バトー「それで内に?」
荒巻大輔「うむ。マルセロが頻繁に入国する理由、それ自体を調査して欲しいとの事だ。」
バトー「南米の麻薬王でしょう、そっちの線は?」
草薙素子「麻薬の取引だけで、マルセロ本人が危険を冒すとは考えにくいわね。電脳麻薬とのセッションが主流の日本が、天然ものを扱うマルセロにとっておいしい市場でない事も事実よ。」
バトー「もし本物ならいい機会だ。内でやっちゃおうぜ!」
荒巻大輔「外務省からの横槍でな。今回は奴を大人しく帰さねばならん。」
バトー「はあーあ。」
トグサ少佐。マルセロの潜伏先、特定出来ました。
草薙素子:何処?
トグサ:ニューポートホテルです。6回車を乗り換えて、ここに落ち着きました。
草薙素子パズボーマ!ニューポートホテルに向かえ。トグサはそのまま待機。

草薙素子ボーマ、そちらの動きは?
ボーマ:今の所は何も。念の為ホテルの名簿を洗いましたが、マルセロらしき宿泊客の名前はありません。エレベータを33階で降りています。
草薙素子:VIPルームがあるわね。

パズ「フー。」

トグサ「ん。」
ベルボーイ「いらっしゃいませ。」

草薙素子バトー!準備は?
バトー:へいへい、いつでも。
草薙素子:高い所、好きなんでしょ?
バトー「ああ、そうさ。俺は高い所が大好きさ!」

バトー:居たぜ、マルセロだ。他にも数人、客が来てるな・・・ん?ワゴンの音。メイドロボットが来るな。
草薙素子:丁度いい、その娘の目を借りてみるわ。
バトー:枝が付かねえか?
草薙素子:そんなヘマしないわよ。

メイドロボット「ルームサービスです。」

草薙素子:マルセロ。
観察官:マルセロ・ジャーティのデータと照合、一致しました。
草薙素子イシカワ、マルセロと一緒に居る男を洗って。
イシカワ:もうやってる・・・出たぞ。権藤金吉、功綸会新浜支部の幹部だ。実質的には功綸会の中心人物といっても問題は無いだろうな。日本国内の電脳麻薬を手がける大元締めだ。このホテルも功綸会の息がかかっている。

刑事A「警察だ。権藤が中に居るだろう。話がしたい。ドアを開けて貰おうか。」
チンピラ「サツに用はねえ。帰んな・・・ぐあ!」
刑事A「気安く触るんじゃねえ、チンピラが!」
草薙素子:課長、これは?
荒巻大輔:ちょっと待て。今調べておる。
刑事A「ぬぅ、何だ貴様は!?」
刑事A「ぐー!」
用心棒「おーああぁあ!」
刑事B「ぐああ!」
用心棒「あ!あ!お!お!お!」

荒巻大輔少佐。ホテルで動いているのは麻薬密売の現場を押さえようと張り込んでいた県警の刑事達だ。連中が追っているのは功綸会の幹部権藤で、マルセロではない。県警にマルセロを押さえられては面倒な事になる。奴を逃がせ。
草薙素子:荒れるかもよ。
荒巻大輔:根回しは儂がやる。
草薙素子:了解。
草薙素子バトー、降りるぞ。」

権藤「ちいっ!やむを得ん。急いで例の場所に行くぞ!お前達はここでサツを食い止めろ!」

ガイノイド「バァン。」
チンピラ「ぬああ・・・!ぐわっ!」

草薙素子「派手にやったわね。」

権藤「もう終わりだ・・・け、警察に感付かれちまった。俺あ、俺はもう破滅だ。」
トグサ:こちらトグサ。現在マルセロを追跡中。
草薙素子:了解。8分後に、追走しているボーマパズに引き継げ・・・課長、功綸会の施設が県内にどれ位あるか調べられる?それと首都高辺の、マルセロが過去に入国していた時期の映像をチェックしてみて。
荒巻大輔「よし。マルセロの過去5年間の監視カメラのデータを吸い出せ。功綸会の所有する施設・住居も一緒にだ。」

トグサ「ん?」

トグサ少佐。申し訳ありません、逃げられました。
草薙素子ボーマ
ボーマ:いま確認した。

9課オペレーター「出ました。過去5年間、マルセロ・ジャーティ新浜郊外へ向かう高速道路のサービスエリアにその映像記録が多数残されています。」
荒巻大輔「マルセロの行動記録を重ねると、功綸会の施設もいくつか特定出来る。そのデータを送る!」
バトー「大型の資材倉庫か。」
イシカワ「その倉庫から妙なデータが取れたぞ。マルセロが入国していたタイミングで、電力消費量が異常に跳ね上がってる日が何回かある。」
草薙素子「電力消費?」
ボーマ:こちらボーマ。今マルセロが車を捨てて公道に降りた。尾行をタチコマに代わる。

イシカワ「あれだ。」

バトータチコマからの映像だ。」
草薙素子「ビンゴ!マルセロと権藤はあの中ね。」
バトー「警備も大したこたあねえな。」

トグサ:こちらトグサ。今倉庫の裏側に来ています。
草薙素子:よし。イシカワが施設の回線を掌握し次第、マルセロを一旦拘束する。入るぞ!

権藤「俺あもう終わりだ・・・う!?」
バトー「やあ。」
権藤「う、あ、あ、うぐごがが・・・」
バトー「暫く別の夢見とれや。」
権藤「うぐー・・・!」

トグサ少佐。聞こえますか? 見つけました、奴です。
草薙素子「通信ノイズはこいつの電波遮断が原因か・・・」
草薙素子トグサ、何処だ?
草薙素子「あれか・・・」
草薙素子トグサ、私の合図で一斉に出るぞ。
トグサ:了解。
草薙素子バトー。マルセロはプラントの中だ。後から来い。
バトー:ああ?何だ?よく聞こえねえぞ。少佐!?
草薙素子:駄目か・・・トグサ、出るぞ!
トグサ:了解!

草薙素子「なっ!?」

トグサ「動くな!」
トグサ少佐、何処ですか?」

草薙素子「はっ!」

草薙素子「がっ・・・!ぐぅっ・・・んぐあ・・・う・・・ぐ・・・だああ!」

草薙素子「けほっ。」
草薙素子トグサ、どういう事?マルセロが二人いるわよ!?
バトー:ああん?何言ってんだ少佐。マルセロなら俺がとっくに捕まえてるぜ?
トグサ:ちょっと待ってくれ。どういう事だ?マルセロは俺が・・・

草薙素子「あっ・・・!ゴーストダビング装置・・・」

観察官「歩行パターンは、両膝下を義体化したものです。同じく義体化した右腕を無意識に撫ぜる動作は明らかに幻肢の症状で、ゴーストの存在を示す有力な外見的特徴です。その他いくつかの行動パターンを欧州警察のデータバンクと照合した結果、マルセロ・ジャーティであると判定します。」
バトー「本物だとさ。」
草薙素子「そぅ。」
バトー「課長の奴、どの機関にも知らせるなって言ってたけどよ、いいのか? 世界的なスキャンダルだぜ?」
草薙素子「マルセロ本人はとっくの昔に死んでます、って?」
バトー「それにしてもゴーストダビングに3回迄は耐えたってんだから、流石南米の種馬。」
草薙素子「功綸会はいざマルセロが死んでしまうと、その報復が怖くなったのね。何とか本国に気付かれない様に更なるダビングを繰り返した。」
バトー「都合良く影武者の量産が出来たはいいが、今度は影武者同士の記憶の並列化が必要になったって訳か。」
草薙素子「そう。本人が生きていると思わせる為には、個体差があってはならなかったのよ。」
バトー「その為の観光旅行か。そう迄して危ない橋を渡らなきゃならない事情ってのは、俺には分からねえな。」
草薙素子「彼、英雄だからでしょ?」
バトー「その英雄が人形だって分かったら、信じて付いて来ている国民はどうなるんだ?」
草薙素子「機能しない名ばかりの英雄よりも、夢を語り続ける人形のほうが、幾らか増しよ・・・」


脚注
※1:idolater 偶像崇拝者の意。

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