the Cat Met with Special Boxes.

第8話 恵まれし者たち MISSING HEARTS

めぐまれしものたちThe Fortunate Ones

粗筋

提供者の承諾の無い心臓が臓器移植手術に使用された。
9課が調べを進めて行くと、臓器密売に手を染めている、あるグループの存在に行き当たる。
自分の心臓を失ってしまった被害者と、人間らしい心をなくしている犯人。
幼少のころに全身を義体化している草薙は、事件に対して特別な感情があるのか、犯人達にきついお灸を据える・・・


登場人物

用語

セリフ

少女「フン・・・フフン・・・出来た!」

a stand alone episode :恵まれし者たち MISSING HEARTS

くるたん「なんだ、素子か。びっくりするじゃない。」
草薙素子「珍しいわね、こんな時間に呼び出しなんて。」
くるたん「よく言うわよ。最近じゃお誘いにも全然乗ってこないくせに。」
草薙素子「で、どうしたの?」
くるたん「うん。ちょっと、気になる事があってね。あの子、先月心臓の移植手術を受けたの。ご両親は適合する心臓が見つかったって大喜びされて。提供してくれた人に直接お礼を言いたいって言ったらしいの。」
草薙素子「今の所はいい話の様だけど。」
くるたん「うん。その心臓の提供者ってのが、あたしが担当中の少年で、治療の為に身体の一部を義体化する事になって、負担のかかる心臓を人工臓器に取り替えたんだけど・・・彼のご両親は、そもそも臓器を提供した覚えが無いって言ってるの。」
草薙素子「虚言癖、恥ずかしがり屋、コーディネイトの手違い、術後の記憶の混乱、その他の後遺症の可能性は?」
くるたん「少年の母親が警察に相談したらしいんだけど、担当の刑事が事故にあって、捜査は中断してるんだって。こういうのって素子の管轄かどうかは知らないけど、何か気になっちゃって・・・突発的な事件に巻き込まれての手術だったから、臓器が無ければ全身義体化も覚悟してたみたいね。あの歳だと、成長に合わせて義体を換えていくのは大変なストレスだし、メンテやら費用やら先々の事を考えてみると運が良かったのも確かなんだけど・・・」
草薙素子「あの子、いくつ?」
くるたん「まだ、6歳になったばかりよ。」

草薙素子:まあそんな訳で、大した情報じゃなかったわ。どうする?このまま戻る?
荒巻大輔:その少女の臓器をコーディネイトしたと言うメディテック社に行ってこい。こっちはイシカワボーマに金の流れを洗わせてから合流させよう。
草薙素子:何か気になる事でも?
荒巻大輔:昨今、我が国で海外マフィアが絡んだ集団拉致事件が頻発している事は知っているな?
草薙素子電脳デバイスや臓器を闇ルートで取引してるって言う?
荒巻大輔:今回の件も、密売を助ける国内ルートが絡んでいる可能性がある。一通り確かめたい。
草薙素子:分かったわ。
トグサ「了解!」

秘書「いやあ、お待ちしておりました。メディテック社代表取締役のイワサキです。」
トグサ「どうも。公安9課トグサです。」
秘書「いや、イワサキはこちら。私は秘書アンドロイドです。」
トグサ「ああ・・・これは」
イワサキ「はは、いやいや、気にせんといてください。いつもの事ですわ。ジェイムスン型いうのは、どうも他人様には理解されまへんな。女房子供にも、義体の趣味が悪い言うて、しょっちゅう怒られてますわ。しかし、これだけは譲れない、男の拘りっちゅう奴ですから。あっはっはっはっはっはっ・・・あ、すんまへん。で、何か確認したい事があるっちゅう事でしたな。おい!」
秘書「はい。」
トグサ「これなんですが。」
イワサキ「ほう、なになに・・・ほぅほぅ。確かにこれは内とこの納品書ですな。けどおかしいですわ。内とこはコーディネイト業務迄はやってへんのにな。まあ、調べたいもんがあったら、何でも好きに調べてもろて構いまへんで。」
トグサ「はは・・・」

草薙素子「お宅は確か、遺伝子を預けて臓器のスペアを、とか宣伝してたわね。」
イワサキ「ええ。豚にお客はんの遺伝子を組み込んで、希望の臓器を育てるんですわ。いざっちゅう時には摘出してお届けするちゅう訳でして。」
草薙素子「それ、儲かるの?」
イワサキ「何言うてるんですか、えらい儲かりますがな。お宅も遺伝子預けて豚飼うたらよろしいわ。標準プラン臓器5種類の組合せで、今やったら特別価格にしときまっせ。」
草薙素子「そういうのは生身の彼に言って。」
トグサ「いや、俺も・・・」
イワサキ「ああ、なになに。豚の存命中に臓器が要らん様になったら、コーディネイト会社に売ったらよろしいがな。お宅も投資するんやったら一つ、わてらメディテック社にお願いしますわ。お、投資だけやったらサイボーグのねえさんにも出来ますやろ?」

イワサキ「ほな、後はお好きな様に。」
秘書「何かありましたら、お呼び下さい。」
トグサ「どうも。」
トグサ「ああいうの、時代が進んでも変わらない郷土性って言うんですかね?」
草薙素子「浪速の商人って言いたい訳?どんなステレオタイプよ。態々下手な関西弁使って、自分を演出してんでしょ。」
トグサ「にしても、人工臓器を扱う業界最大手の社長がジェイムスン型の義体を使ってるサイボーグとは・・・あの勢いだと、自分の臓器迄商品に回しちゃったのかも。」
草薙素子「で、あの箱に入ってる?有り得なくも無いわね。」
イシカワ「よぅ。引継ぎに来てやったぜ。」
草薙素子「ご苦労。」
イシカワ「金の流れを追ってて、気になる事を見つけてな。犯罪被害者救済基金からの臓器の代金が、この会社宛てに支払われているんだ・・・こいつだ。だがここの記憶にそれは無く、通信料と業務記録にも一致しない。」
草薙素子「外部からの改竄操作?」
イシカワ「まあそんな所だろ。メディテックともあろう大企業も、内部情報のプロテクトに関しては笊だな。」
草薙素子トグサ。入院中の担当刑事の所に行くぞ。」
トグサ「頼んだぜ。」

医師「確か先週末でしたか、捜査中に倒れたとかで緊急入院でしたよ。検査の結果、薬物反応が出まして、若干ですが記憶の混乱も見られます・・・ん?・・・おい!」
トグサ「大丈夫か・・・!?ちいっ!やられた!」

トグサ少佐!」
草薙素子「早く乗りなさい。」
トグサ「すいません。」
草薙素子「言い訳は後よ。タチコマ、いる?」
タチコマ:病院の屋上でーす!
草薙素子:遅れるんじゃないわよ!

コキタ「危なかったなあ。」
学生A「出て来るのが遅いんで肝を冷やしましたよ。」
学生B「何言ってんだ。そもそもお前が欲張るから、ラベルの貼り変え漏れなんて起きたんだぞ!」
コキタ「刑事の記憶を消してきたから大丈夫だろ。」
学生B「それにしても今の奴、何者だろう。」
コキタ「知るかよ。同僚の刑事か何かだろ。」

草薙素子タチコマ。目標の車、追いつけそう?
タチコマ:張り付く事は出来ますけど、逆に目立っちゃいますよ。
草薙素子:そのまま屋上伝いに付いて来い。ナンバープレートを確認しろ。
タチコマ:了解!
草薙素子トグサ。長距離無線を全方位でスタンバイ。探査ウイルスばら撒くから、エコー計測しろ。」
トグサ「え? それって、電波通信法に抵触するんじゃ・・・」
草薙素子「局所的非常事態って奴よ。」
トグサ「了解・・・トンネル出たら送信出来ます。」
草薙素子「よし。」
トグサ「送信スタンバイOK・・・GO!」
トグサ「来ました。逃走車両特定、登録者も確認出来ました。逃亡者は、研修中の医学生の様ですね。どうするんです?」
草薙素子「向こうはこのまま港の倉庫街に潜るつもりね。そろそろバトーを呼ぶか。」

草薙素子「お前はこのまま目標車両を追跡しろ。私はタチコマバトーと合流する。」
トグサ「了解。」

学生B「調子に乗り過ぎたよ。これ以上はやばいよ。早く捨てようぜ。」
コキタ「俺達は義体化のままならない一般市民に激安で臓器を提供していただけじゃないか。それに仮に捕まったとしても、親父が何とかしてくれるって。」
学生A「でも、とりあえずはどうするんです?これ。」
コキタ「ほとぼりが冷める迄は車ごと隠して置く。この先は空き倉庫やジャンクヤードだらけだ。車の一台位、暫く放置しても気付かれやしない。」
学生B「さっきの男が気になる。行き成り銃を撃ってきたし・・・もしかして、集団拉致を起こしてると言う海外マフィアじゃないのか?」
コキタ「そんな訳ないだろ。」
学生B「いや、そうだよ絶対。あいつ等のシマを荒らしたからだ。もし捕まったら、俺達もバラされて、売られちまうんじゃないのか。マフィアなら***。おしまいだよ。ヤバいよ絶対・・・」
コキタ「おい、少し黙ってろ・・・」
学生B「そうだ、やっぱりそうなんだ!あうぅ・・・」
学生A「ほんとに、ヤバいかも知れないですよ、俺達・・・」

草薙素子バトー。聞こえてる?
バトー:見えてもいるぜ。指示通りの場所で待ち伏せ中。
草薙素子:逃走車両をポイントD-3に追い込め。殺さない程度に脅かしていいぞ。
バトー:おいおい。いいのか?そんなおもしれえ事やって。
草薙素子:構わん。
バトー「へっへっへっへ。そうこなくっちゃあ・・・タチコマ!」
タチコマ「でわー。」

バトー「おう、あれだな。よし、人間には当てんなよ。」
タチコマ「まかせといて下さい。」

タチコマ「エッヘン!」
コキタ「早く車から降りろ!逃げるぞ!」
バトー「おほー、頑張るな。へへっ・・・よし!もう一丁だ!」
タチコマ「それでは遠慮なく。」

学生「ぐああ!」
バトー「よおう。ケレン味たっぷりにしといてやったぜ。」
草薙素子「ご苦労。」

トグサ「おーい、ちょっとやりすぎなんじゃないの?」

学生A「ゆ、許してくれよぅ。」
トグサ「やっぱり医学生だ。」
バトー「将来こういう奴等に頭ん中弄られんのかと思うと憂鬱になるぜ。」
タチコマバトーさーん。こんなの見つけました。」
トグサ「状況から纏めると、サイボーグ化手術後の臓器のラベルを勝手に貼り変えては売り捌いていた、って所か。」
草薙素子「もう一人居た筈ね。」
バトー「おー、しぶといな。確保する。」
草薙素子「いや。私に任せなさい。小遣い稼ぎにしては質が悪いわ。こういう手合いは法の手に委ねても、有耶無耶にされるのが落ちよ。ちょっと取っちめてやるわ。」
バトー「おほー、おっかねえ。何かあったのか?」
トグサ「さあ・・・」
バトー「おらあ。お前等は俺が相手をしてやる。」
学生B「うわっ、たっ、たす、助けて下さい。臓器だけはお願いします取らないで。」
バトー「はあ?」
トグサ「あんたの顔を見りゃあ、誰だってマフィアと思うわな・・・ん?」
学生A「あ、うぅっ・・・」
トグサ「て、おい!俺もかよ・・・」
バトー「へへっ。」

コキタ「はあ、はあ、はあ・・・ああ!?な、何だ・・・?一体、何なんだ?」

コキタ「はあ・・・あうっ・・・!ああ・・・あ!」
草薙素子「見た所全身生身だな。闇市場にばら売りすれば、さぞ高く売れるだろう。」
コキタ「まさか・・・お、おい、待ってくれ。いい流通路を知ってるんだ。ボロい商売だぜ。な、手を組まないか?親父に頼めば車も倉庫も用意出来るし、資金にも困らない筈だ。悪い話じゃないだろ?」
草薙素子「お前等の様な青二才と取引をするとでも思うか。そっちの流通路も頂いた上で口封じをする。臓器をばらせば証拠も残らず金にもなる。一石二鳥だ。」
コキタ「ま、待ってくれ。わ、分かった、金か?金なら親父に頼めば幾らでも出してくれる。な?い、幾ら欲しいんだ?」
草薙素子「お遊びが過ぎたな。お前等は取り返しの付かない世界に首を突っ込んでしまったんだ。」
コキタ「ひいっ!許してよ、もうしないよ!頼む、もう二度としない!頼むよ、勘弁してくれ!」
草薙素子「残念だったな!」
コキタ「ひいぃっ!」
草薙素子「こんなに甘くはないぞ・・・」

草薙素子「裏社会には論理が通用しない相手が幾らでもいる。今の内に心を入れ替えろ。お前等には金も学もある。その上五体満足なんだろ?」

タチコマ少佐ー、出られませーん。」
草薙素子「あとで回収に来る迄大人しくしてなさい。こいつ等を警察に引き渡してくるから。」
タチコマ「はーい。」

タチコマ「あ、バトーさんだ。」
トグサ「あ、旦那。なあ、今日の少佐、ちょっと変じゃなかった?」
バトー「え?」
トグサ「いや、今日の少佐、いつもと少し様子が違った様な気がしてさ。」
バトー少佐、あの少女と同じ年頃で全身義体化したんだ。今回の一件では、色々と思う所もあったんだろう。」
トグサ「ふぅん・・・」
バトー「まだ何かあんのか?」
トグサ「いや、別に。只、世の中には事件に巻き込まれて否応無く臓器移植を迫られる少女もいれば、敢えて自分の臓器を捨ててサイボーグになりたがる社長もいる訳じゃない。」
バトー「その狭間で臓器ビジネスが潤い、天然モノにはプレミアが付き、この国の経済も回ってる。宗教的戒律と経済的制約を受けない環境にある者だけが、高性能の義体を手にする事が出来るのさ。9課みたいにな。何だ?搾取する側に回ってる様で、柔なハートが痛むか?」
トグサ「そんなんじゃないよ。只、少佐はどっちだったのかなって思っただけさ。」

タチコマ「チェックメイト。」
トグサ「ああ?ゲームが違うだろ・・・!あ・・・」
草薙素子「なあに?あんた達。バトーはまた筋トレグッズなの?給料で何買おうと勝手だけど、感心出来ない消費癖ね。」
バトー「何だよ。お前こそ外面ばっか女ぶってないで、そろそろ男型の義体に変えたらどうだ?パワー出るぜえ、その方が。」
草薙素子「ふん・・・」
バトー「やるか?」
バトー「へ?お・・・どお!」
草薙素子「無駄にパワーのある相手の力を逆に利用すれば、女性型でも問題ないでしょ?バトーには脳味噌の筋肉を如何なく駆使した、読み応えある報告書を期待してるわ。」
トグサ「大丈夫かよ?バトー・・・」
バトー「痛くない。」



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