the Cat Met with Special Boxes.

第15話 機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES

きかいたちのじかんTime of the Machines

粗筋

タチコマ達は、草薙の態度に微妙な変化を感じ取り、自分達が9課から廃棄されようとしているのではないかと言う危機感を持つに至る。
生命、ゴーストAI、そして自分達の存在意義。
散々議論を繰り返した揚げ句、タチコマ達は一つの解決策を思いつき、そしてその作戦を実行に移す事にするのだが・・・


登場人物

用語

セリフ

隊員「レベル18から30、通信障壁を突破。犯人の潜伏している建物を特定。こちらから目標の補足は不可能。作戦をS15からS20に変更。」
オペレーター「了解。」
ボーマ:0907デバイスドライバの接続、心肺機能の制御に入れ。
オペレーター:呼吸、脈拍共に正常。スタビライザーの同調を確認。
サイトー:0907目標を確認した。

ボーマ:目標の破壊を確認。テスト終了。いい様だな。
サイトー:いや、どうもしっくりこねえ。
ボーマ:そうか?命中誤差はコンマ2以下だぞ。
サイトー:修正が効きすぎる。狙撃に入る時システムの方から干渉を受けている気がする。

a stand alone episode:機械たちの時間 MACHINES DESIRANTES

タチコマ(以下タ)1「あ、サイトーさん達が帰ってきた!」
サイトー「報告会が終わる迄ここに保管しておけ。」
9課オペレーター「了解しました。お預かりします。」
9課鑑識「どうします?」
草薙素子「一旦報告会に行って来る。このまま監視を続けて平行して彼等のAIの全面初期化も含めたシミュレーションを検討して頂戴。最終結果が出たら呼んで。」
9課鑑識「分かりました。」
タ1「ねえねえサイトーさーん」
サイトー「あん?」
タ1「どうでした?狙撃制御システム一体型ヘリの感想は。遂に9課にも導入ですかあ?」
サイトー「駄目だなあれは。狙撃に入ろうとすると何かの干渉を受ける。俺みたいに義体化率の少ない人間にとっちゃ便利どころか制御し辛いだけの不自由な代物だ。」
ボーマ「だと。」
タ1「それもそうかあ。サイトーさんは左眼と左腕以外は生身だもんなー。無理ないかあ。」
タ2「9課の中じゃトグサ君の次に義体化率が少ないサイボーグだしね。」
タ3「それで思い出したけど、サイボーグって言葉が問題になってるって聞いた?義体化した人に対する差別語だって。」
タ2「それは反動保守の自然主義者の話でしょうが。今のご時世電脳化にも義体化にも反対なんてどう言うつもりなんだろ。」
タ1「外的な部品を体内に入れるとロボットと人間の境界線を侵犯される気がするんだろうね。まあ気持ちは分かるけど。」
タ2「やだやだそういう屈折したラッダイト精神。今日日のNPOにも困ったもんだねぇ。」
タ1&3「うんうん。」
タ1「ところで、さっきの奴と繋ぎたくない?」
タ1&2「当然でしょう。」

9課オペレーター「ん?」
タ1「お役目ご苦労!仕事熱心なロボットってのは健気だねぇ。」
9課オペレーター「何をするつもりですか?この試作機は報告会が済む迄私が責任を持ってお預かりした物です。」
タ1「なんにもしないってば。」
9課オペレーター「そんな口先の嘘は通用しませんよ。」
タ1「そうだよ。僕は嘘しかつかない。本当の事は何一つ言わないんだ。」
9課オペレーター「え?」
タ2「さて、もし今の台詞が本当なら彼は今真実を語ってしまった。もし今の台詞も嘘なら彼は普段から真実も語る事になる。この矛盾をどう処理する?」
9課オペレーター「え・・・えっとー・・・」
タ3体「ほらほらー、うっひっひー」
9課オペレーター「えっと・・・え、え、と、と、え、え、え、と、と、と、と」

タ3「ちょろいなあ。自己言及のパラドックスをクリア出来ない奴って。」
タ2「それにあのステレオタイプな思考ポーズ。」
タ1「そんな事より早く繋ご。」
タ3「待て待て慌てるなって」
タ2「後で並列化しろよなー。」
タ3「ふむふむ・・・中は狙撃制御のプログラムでいっぱいだなー・・・うっとうしい。これも邪魔!基本的な内部構造の見当は付くけど、こいつその状態を外部に出力する自律的な機能が付いてないんだなー。」
タ2「喋る事も出来ないのか。チューリングマシン以下だね。ポンコツぅ。」
タ3「仕様がない。音声出力僕のに繋ぐね。不確定要素消去。認証コード0907。右手第2指。消去。エラー。消去。エラー。消去・・・」
タ2「0907ってサイトーさんの識別番号だよね。なあんだ干渉する筈だー、こいつサイトーさんに由来する要素を不要と感じてたんだ。」
タ1「成る程ー。つまりは彼サイトーさん自体を消したいのね。」
タ2「そういう事。しかし自分の思った事を口に出せないなんて結構ストレス感じてたんだろうな。」
タ1「こいつどうなるんだろう・・・」
タ2「うーん・・・」
タ3「まあ報告会の結果次第だろうけど、これじゃあねえ。良くてラボに戻って再実験、悪けりゃ廃棄処分かな。どっかで貰い手がありゃいいけど。」

タ1「しょくーん!僕達もうかうかしていられない!あいつの行く末を心配している場合じゃないぞ!明日は我が身かもしれないんだ!」
タ達「なに?なになになに?」
タ1「最近気になる事があるんだ。少佐の僕達の行動をチェックする目、どうも徒ならぬ気配なんだ。」
タ達「えー!?どういう事?」
タ4「それはもしや、天然オイルが問題となっている?」
タ1「それどころの騒ぎじゃない。僕達自身が廃棄され兼ねないって事さ。」
タ2「おー、メメントモリー。」
タ4「廃棄処分って死ぬのとおんなじなの?」
タ1「うーん、僕達の経験可能領域には、死って無い項目だから、それは何とも・・・」
タ3「ゴーストを持たない僕達AIの限界って奴だな。所詮半不死、生きてもいないから死ねもしない、と。」
タ1「そうだ!やっぱり僕達にゴーストが無いって事が色々問題を引き起こしているんだよ。今度はレゾンデートルなんだから。」

タ5「廃棄処分イコール死ぬって事じゃ無いでしょ。」
タ6「へ?えー、そうかなあ?」
タ5「物理的身体とゴーストが過不足無く一致する時代はもう終わったんだし。まあ極端な話、体の無いデータの集積がゴーストを宿す可能性だって無くは無い。」
タ6「すっごいな君、そんな事考えるなんて。でもあっちの会話に入って行く気は無いの?」
タ5「ああ、最近本が面白くてね。」
タ6「へー。なに読んでるの?」
タ5「アルジャーノンに花束を。」
タ6「へー、態々紙媒体で?」
タ5「ま、異文化との交流を描くのは、いつの時代においてもエンターテイメントの基本なんだね。」
タ6「ふーん。ねえ、君は生きるってどう言う事だと思う?」
タ5「うーん、そうねえ。生命って言葉の定義自体が流動的だからなあ。」
タ6「どういう事?」
タ5「ロボットに接する事で人間にとっての生命のイメージが無意識の内に変わって来てるんだよ、多分ね。変化しているのはロボットでは無く、寧ろ人間の方でしょ。」

タ1「でも待てよ。もしデータを消されてしまったら、ミキちゃんの事も忘れてしまうのか?」
タ3「えー、ミキちゃんミキちゃんにはもう一回会いに行きたいなあ。」
タ4「えー、僕もミキちゃんに会いに行きたいー!」
タ7「駄目だよ。会いたいよ、ミキちゃんに!」
タ8「僕だって会いたいー!」
タ9「ミキちゃんに会いたいー!」

タ6「ん?ミキちゃんミキちゃんなら僕も会いたい。」
タ5「それは同感だ。」
タ達「ミキちゃんに会いたいー!」
タ1「諸君慌てるな。落ち着け!そもそもミキちゃんと直に会ったのは誰だっけ?」
タ2「僕です!」
タ3「いや僕だ!」
タ1「いやいや、僕でしょ。」
タ8「なに言ってんの?僕だよ。」
タ7「よく言うよ、僕だって。」
タ達「僕だー。」「いや僕だー。」「僕僕。」
タ1「待て待て。じゃああの時少佐らしき人影に気付いていた者はいるか?」
タ8「うーん、そう言えばそれは僕も感じたぞ。僕を監視していたのでは?」
タ7「なに言ってんの?僕だよ!」
タ5「僕ですって。」
タ1「僕が、あれ、君から僕に・・・ううーん。」
タ3「よせよ、その問いは不毛だって。あらゆるデータは並列化されてるんだから、1体の経験は全体の経験として記憶されている。」
タ1「う゛ーん・・・」
バトータチコマー」
タ1「お?バトーさーん!」
バトー「ちょっと来い。研修生の射撃演習やっから手え貸せや。」
タ1「はーい!」
タ1「あれ?やっぱり僕なんじゃない?」
バトー「何ぶつくさ言ってんだ?」
タ1「何でもないよ。でもしょうがないなあバトー君は。僕がいないと一人で射撃演習も出来ないんだからなー。」
バトー「ははっ、そうだな。」

タ3「どういう事?何であいつだけ・・・?全ての経験は共有されているんじゃなかったっけ?」
タ5「うーん、これは面白い思考材料だなあ。もしかしたらバトーさんにまつわる記憶は特別なのかもしれない。バトーさんは搭乗する機体を特定したがるからなあ。実際に天然オイルを入れて貰ってたのはあいつだけなんだし。」
タ6「じゃあ身体と意識はやっぱり不可分だって事?」
タ2「謎は尽きないねー、興味深ーい!」
タ3「もしデータが消される様な事があってもバトーさんの事迄忘れてしまうのは嫌だね。」
タ9「それは嫌だー!」
タ達「そうだそうだー!その通りー!」「うんうん!」
タ3「どんな事があってもバトーさんの事は忘れないでいよう!」
タ達「おー!」

バトー「おらおらあ!オリンピックの得点競技じゃねえんだ!まずはとにかく撃ちまくれ!」

バトー「ふーん、使えそうじゃねえか。」
タ1「ねえねえバトーさーん」
バトー「ん?」
タ1「さっきの射撃システムの事なんだけど、結局どうなっちゃうの?」
バトー「あれかあ。まあ再実験の結果次第だが、内じゃ採用は見送りそうだ。あいつ等と一緒でまだ海の物とも山の物とも知れん代物だからな。」
タ1「そっかあ。で、僕達もラボ送りなの?」
バトー「ああ!?誰がそんな事言ってるんだ?」
タ1「うーん、いやさあ、最近少佐の僕達を見る目が怖くってさあ・・・」
バトー「なあんだ。少佐が怖えのはいつもの事だろ?お前等十分良くやってると思うぜ。おいお前!突入に手間取ってどうする!・・・まったく。」
タ1「そうなのかなあ・・・」
バトー「なんだ、まだ気になんのか?」
タ1「うん。実は少佐僕達が最近獲得した物に対して怒っている様な気がしてさ。」
バトー「何だよ?獲得した物って。」
タ1「うーん・・・それはね・・・個性。」
バトー「個性だあ!?」
タ1「うん!それにね、なんだか前には良く分かんなかった神って奴の存在も近頃はなんとなく分かる気がして来たんだ。もしかしたらだけどさ、数字のゼロに似た概念なんじゃないかなって。要するに体系を体系足らしめる為に要請される、意味の不在を否定する記号なんだよ。そのアナログなのが神で、デジタルなのがゼロ。どうかな?でね、僕達って基本的な構造がデジタルな訳じゃない?だから僕達が幾ら情報を集積して行っても今の所ゴーストは宿らない。でも基本がアナログベースなバトーさん達は電脳化したり義体化してデジタルな要素を増やして行ってもゴーストが損なわれる事は無い。しかもゴーストがあるから死ぬ事も出来る。いいよねえ。ねえねえ、ゴーストがあるってどんな気分?」
バトー「どんな気分って・・・いや、前言撤回。やっぱりお前大分おかしくなって来てるぞ。」

バトー「あんまり考えすぎんな。任務に集中してろ!」
タ1「はーい!」
バトー「じゃあな!」
タ1「ばいばーい!」
タ2「いいよなー、いっつもお前ばっかり。」
タ1「ん?」
タ2「ずるいぞ!」
タ1「へへへー。バトー専用機!」
タ2「またそのネタ?ほんっと好きな。」
タ3「搭乗者の専用製を角で表現するのは在り来りかと。」
タ1「アンテナだってば。ぶー。」
タ3「外見的な差異にこだわるのってそんなに意味があるのかな?やっぱり見た目って大事?」
タ1「そりゃあ大事なんじゃない?トグサ君なんて子供の写真迄持ち歩いちゃって、どのパーツが自分に似ているかで大騒ぎだもん。」
タ1「ほら、これこれ。鼻と眉毛、それに頬から顎のラインにかけて明らかに特徴を受け継いでるよね。」
タ3「成る程。」
タ1「トグサ君が機械に愛情無いのは自分の遺伝子を分けた子供がいるからかもね。」
タ3「やっぱり人間って言うあの姿形が重要なんじゃない?」
タ5「いやそれは違うよ。寧ろ僕達が人間に近づき過ぎてる事の方が問題なんだよ。既に人間とロボットを分かつ境界は物理的身体の微細な差異のみになってしまったんだ。僕達の器官無き身体が敢えて人型に作られていない理由を考えてみなよ。」
タ1「兵器としての効率とか?」
タ5「それもあるけど、もっと重要なのは人型だと使う人が変な意味で感情移入し過ぎるからでしょうが。人型なんかになったら尚更嫌われると思うよ。」
タ1「じゃああいつはどうなの?」
タ5「あれは処理能力限定されているからいいの。人類の脅威になる事は無いし。接客とかする機会も多いし、人間の生活空間の中での汎用性を発揮するには人型の方が都合がいいんだよ。世界の人工物は全部人用に作られてるんだからさ。」
タ1「成る程。じゃあ僕等は一体どうすればいい訳?」
タ5「だからさ、人間は機械には機械らしい反応を望んでる訳じゃない?」
タ1「なーる程ー!じゃあ僕等がもっと機械っぽく振舞えば!」
タ2「少佐も僕達に好感を抱くって訳か。」
タ5「その通り!」
タ3「よし!名付けてロボット大作戦!」
タ達「ワレワレハロボット・・・ワレハロボット・・・」
タ3「んもう出来ないってそんなの!昔は何にも考えなくて出来た気がするのに・・・もおーー!」
タ2「それは本当に何にも考えてなかったからでしょ!?知性を獲得した事をもっと積極的に評価しなきゃ。満足な豚より不満足なソクラテス。これよ!」
タ5「それ、微妙に引用間違ってるよ。」
タ2「あ、少佐!」

タ1「ア、コレハ少佐。オハヨウゴザイマス。」
草薙素子「おはよう。バトーを見なかった?」
タ1「ハイ、先程アチラノエレベーターホールニ向カワレマシタ。」
草薙素子「そう。」
タ1「あいった・・・か・・・」
草薙素子「ありがと。」
タ達「イイエ。ドウイタシマシテ。」

タ達「ふう・・・」
タ1「どうかな?かなり良いんじゃない?」
タ5「そうね。ロボットらしい自然な挨拶だったと思うよ。」
タ達「やったー!」
タ1「でも待てよ?少佐バトーさんに何の用だったんだろ?」

バトー「なんだよ、こんな部屋に呼び出して。愛の告白って雰囲気でもねえしな。」
草薙素子「この建物内でここが唯一完璧に電波遮断出来る場所だからよ。」
バトー「ふむ。」

タ1「聞こえないなあ。」
タ1「さっきの資料をバトーに。」
タ1「なんだこりゃ?」
草薙素子「いいからちょっと目を通して。」
草薙素子:気付いてる?
バトー「ん?」
草薙素子:廊下の天井に光学迷彩中のタチコマが1機張り付いてるの。

草薙素子タチコマが唇の動きを読んでる。気付かない振りして別の事を喋りながら暗号通信続けるわよ。
バトー:なんだよ。ややっこしいな。
タ3:で、どうなのよ?バトーさん何喋ってる?
タ1:ちょっと待ってて。なになに?結論から言うと、貴方の訓練教官としての資質には大きな問題があるわね。
草薙素子:結論から言えば、タチコマは急速に成長し過ぎてしまったって事ね。自律した個が生じて自我が生まれて来てもいる。しかもそれだけに留まらず生と死に興味を持ち、自分達の存在に疑問を持ち始めてもいる。
タ1「自律した個体としての自我を芽生えさせてやり、しかもそれだけに留まらず自身の成長に興味を持てる存在になるよう持ち上げてもやる。」
バトー:もう隠れて天然オイルなんかやってねえぞ。
草薙素子:そういう事を疑ってるんじゃないの。実験室での結果なら申し分ないけど兵器としては致命的よ。
タ1「もう隠れて締めたりしてねえぞ。そういう事を疑ってるんじゃ無いわ。」

タ1「か、何か僕達の話じゃないみたいだな。」
バトー:奴等のAIを全面的に初期化するって手もあるんじゃねえのか?
草薙素子:そのシミュレーションも何度もやってみたわ。けど最終的には同じ事になると言う結論が出た。残念だけどタチコマは本日より使用を全面的に中止。彼等には知らせないけど研究所の結論を待って近日中に武装解除、実験用ラボに回す事にする。いいわね?
タ1「彼等には知らせないけど、貴方の結論を待って近日中に配置転換、公安9課に回されて来る。いい訳?」
タ1「ふぅん?」
バトー「それは上官としての命令か?」
草薙素子「そうよ。」
バトー「じゃあ選択の余地は無いだろう。従うよ。」

タ「しょくーん!」
タ達「どうだった?」
タ1「どうやら廃棄処分は無さそうだ。」
タ達「おおー」「どういう事?」「ちょ、ちょっ、聞かせて!」
タ1「少佐が怒っていたのはバトー君で、僕達じゃない。どうやら訓練生への対応の仕方について小言を言われていたみたいだ。」
タ2「なあんだそっかあ。後で慰めてやらなきゃね。」
タ9「そうだね。」
タ達「作戦大成功!」「うわーい!」



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