the Cat Met with Special Boxes.

【攻殻機動隊】第17話 未完成ラヴロマンスの真相 ANGELS' SHARE

みかんせいらう゛ろまんすのしんそうThe true reason for the unfinished love affair

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荒巻と草薙は、国際テロ対策協議のために訪英していた。
任務終了後、荒巻は単身で古い顔見知りの勤める銀行に向かうが、そこで思わぬ事件に巻き込まれてしまう。
一方で銀行の外の草薙は、荒巻を救出すべく策を巡らせる。
草薙と荒巻は互いの意図と行動を予測し、危機を脱する事が出来るのか?

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荒巻大輔「国際テロ対策協議の感想はどうだ。確かSASは2度目だったな。」
草薙素子「世界で初めて義体化部隊を設立したノウハウは健在ね。尤も、その伝統が鼻に付いても来たけど。」
荒巻大輔「うむ。」
草薙素子「どうする?帰国は明日なんでしょ?」
荒巻大輔「儂は少し寄って行く所がある。」

草薙素子「何?此処。」
荒巻大輔「昔馴染みが居て。ワインファンドをやっている。」
草薙素子「ワインファンド?」
荒巻大輔「顧客の預金でワインを購入し保管するアセットマネジメントの一種だ。自然物の味や香りは複製、再現が難しい上に投機の対象に成り易い。ビンテージが物を言うワインは時間経過と共に確実に値上がりが見込まれる。手堅い商品と言う訳だ。2時間したら迎えに来い。それ迄自由行動としよう。」

草薙素子「ふうん・・・昔馴染みねえ。出して。」

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シーモア婦人「丁度仕事上がりなの。2年振りになるかしら。」
荒巻大輔「お前が突如政界を離れて渡英した時は驚いたよ。」
シーモア婦人「今は政治よりビジネスに興味があるの。」
荒巻大輔「うむ。で、相談と言うのは?」
シーモア婦人「相変わらずせっかちね・・・いいわ。実は内の銀行の上層部の手引きで、マフィアの資金のロンダリングが行われてるみたいなの。」
荒巻大輔「ロンダリング!?確証はあるのか?」
シーモア婦人「管理名簿の中に巧妙に偽装されたファイルがあるの。強固な防壁があって中身は確認出来ないけど、恐らくは裏帳簿よ。」
荒巻大輔「マフィアの資金を一旦銀行側がワインの形に変えて保管、値上がりした後に再度換金すると言うからくりか。」
シーモア婦人「それに銀行とマフィアの間を仲介する第三者が居る筈なのよ。只、それが誰なのかは掴めない。その証拠さえ押さえられれば、まとめて検挙出来る筈なの。ねえ、手伝ってくれない?パイプ役が誰なのかその証拠を一緒に見つけて欲しいの。知らない振りをして汚いビジネスの片棒を担ぐのは嫌なのよ。」
荒巻大輔「しかし、此処はイギリスだ。完全に儂の管轄外だよ。下手に動けば越権行為だ。それに」
シーモア婦人「私情で動く訳には行かない。貴方の口癖だったわね。」
荒巻大輔「そうだ。」
シーモア婦人「そっか。やっぱり駄目よね。分かったわ、じゃもうこの話は止めにしましょう。久しぶりに会ったんだし昔話にでも花を咲かせましょうか。」
荒巻大輔「うむ。」

警備員「あのぉ・・・申し訳ありませんが、当店の営業時間はもう・・・」
警備員「ああ!」

シーモア婦人「うん?」

男1「おい、お前は他に人がいないか確認しろ。」

シーモア婦人「何かしら?警備員の他はあたし達しか居ない筈なのに・・・」
荒巻大輔「正面玄関の方だな。」

シーモア婦人「あ!」
男2「おっと、動くなよ。」

男1「裏取引の実態が詰まってる。組織を抜けてやってくには十分だ。」
シーモア婦人「貴方、どうやってセキュリティを?」
男1「組織を抜ける時に防壁破りを頂いて来たんだよっと。よーし、Eの5列に上物が揃ってるな。お前はそこで見張ってろ。」

男1「おー、あるある。」
男1「E-2・・・E-3・・・E-4・・・ん?無いぞ。糞っ!何故肝心のワインが無い!?」

隊長「銀行強盗・・・ですか?」
署長「例の店舗だ。恐らく銀行の女頭取と警備員が人質に取られている。」
隊長「それは厄介ですね。」
署長「いや、寧ろ不幸中の幸いだったよ。包囲さえすれば向こうは篭城するだろう。帳簿の確保を最優先にしてくれ。突入に事故は付き物だ。多少の犠牲は止むを得ん。」
隊長「分かりました。」

隊長「第3分隊に緊急招集を掛けろ。」

男2「ん?警察か!?」

荒巻大輔「ん・・・?あ!おい、そこの薄鈍。」
男2「ああ?」
荒巻大輔「ああお前だ。ちょっとこっちへ来い。」
男2「なんだあ?じじい!」

男1「なんだ!?今の音は!?」
男2「うう・・・ああ!」
隊長「どうだ?」
狙撃手「目標、確認出来ません。」
隊長「糞ー。しくじったか・・・」

男1「狙撃!?警察が何故こんなに早く・・・?さてはお前等だな!やってくれたな!」
荒巻大輔「外部との連絡手段はお前自身が全て絶っただろう。有線回路は切断されたままだし、電脳通信もジャミングが作動中だ。唯一あるとすれば・・・電源を全て落としている中であれだけが外部のリンクを保っている。」
シーモア婦人「でもおかしいわ。基本的にイギリスの銀行は警察を信用していない。此処のセキュリティシステムも民間の警備会社に繋がってるのよ。帳簿へのアクセスを察知したら警備会社の方が早く来る筈よ。」
荒巻大輔「うむ。どうやら銀行とマフィアの仲介役が誰だか見えて来た様だな。」
シーモア婦人「ああ・・・!」

草薙素子「ふぅん・・・ワインね・・・」
店員「贈り物ですか?」
草薙素子「いえ・・・そうね。じゃあこれ頂くわ。」
店員「贈られる方はどういった方ですか?それに合わせてお包みしますが。」
草薙素子「いいわ、このままで。」

男1「警察がワイン取引に噛んでいるなんて聞いた事ねえぞ。でまかせ言ってんじゃねえ!」
荒巻大輔「さっきの狙撃には銃声がなかった。消音装置を使っているのは暗殺が目的だからだ。貴様らも大分危機的な状況だな。組織にはもう戻れんだろうし。仮に警察に投降しても命の保証は無いぞ。」
男1「待てよ!俺達には人質がいるんだぜ?向こうは簡単に手出し出来ない筈じゃないのか?」
荒巻大輔「いや、我々に人質としての価値は無い。」
シーモア婦人「それってあたし達ごと消そうとしてるって事?」
荒巻大輔「恐らくな。帳簿の存在を知った可能性がある者は全て消しておく。機密保持の基本だ。事後処理等なんとでも出来る。」

草薙素子「私は日本の警察関係者だ。中に上司がいる可能性が高い。状況及び情報の開示と共同作戦の展開を要求する。」
隊長「断る。我々の管轄内で起きた事は我々の手で処理する。これ以上邪魔すると拘束するぞ!」
草薙素子(いつも横車を押してくれる課長の有難さは、こういう時に身に染みるわ・・・)

男1「間に合わなくなったら」
荒巻大輔「貴様等、所持している武器を儂に見せてみろ。」
男1&男2「ああ?」
荒巻大輔「確か地図も持っていたな。そこから作戦を立てる。」
男1「なんだと?ふざけるなじじい!自分の立場を分かってんのか!?」
荒巻大輔「安心しろ。我々とて見す見す殺されたくは無い。貴様らは武器を提供しろ。儂は知恵を提供してやろう。」
荒巻大輔「時間が惜しい。早くしろ。」

警官「報道陣迄来てるぞ。」
荒巻大輔少佐の仕業だな。これで向こうも爆破や狙撃といった強攻策を取りにくくなる。」
男1「言われた通りにしたぜ?じじい。次はなんだ?」
荒巻大輔「確か手投げ弾を1個持っていたな。」
男1「どうする気だ?言って置くがお前をまだ信用した訳じゃねえ。下手な真似したら」
荒巻大輔「逃走の為の時間稼ぎが必要だ。向こうにとって突入路はあそこしかない。罠を仕掛けるぞ。」

隊長「配置急げ!」
アナウンサー「一説では」
隊長「思ったより報道陣の集まりが早いな。やはり突入するしかないか。」
警官「配置、完了しました。」
隊長「防犯モニターから回収した映像に写っていた人物の内、身元の確認が取れたのはこの2名だ。それ以外の人間は犯行グループだと思われる。データを頭に入れておけ。いいか!犯人が抵抗する様なら容赦するな!言う迄も無いが人質は無傷で救出しろ!」
隊長「が、不測の事態の場合は別だがな・・・」

隊員「おい、この先は封鎖区域だぞ。」
草薙素子「貴方に個人的な用件があるんだけど。」
隊員「なんだ?個人的な用って・・・?」

男1「言われた通りにしたぜ。でも本当にこんな仕掛け方でいいのかよ?」
荒巻大輔「大丈夫だ。」
男2「次はどうしたらいい?」
荒巻大輔「気絶した警備員を移動する。向こうが突入して来た時に此処では危険だ。」

男2「なんなんだよあのじじいの手際の良さ。」
男1「俺が知るか!」
荒巻大輔「それが済んだら貴様等が開けた裏帳簿のデータを保存しておけ。」
荒巻大輔「よし、やれる限りの時間稼ぎはした。我々もそろそろ逃走の準備をするとしよう。」

隊長「正面入り口に爆弾だと?無駄な事を。突入路を変更、隣のアパートより進入する。私が先頭に立とう。不測の事態に備える。」

隊員「隊長!」
隊長「ど、どうした!?」
隊員「ワインです。」
隊長「何ぃ!?」
隊員「しかもかなりの年代物です。」
隊長「馬鹿者!犯人はどうした!?」
隊員「隊長!」
隊長「居たか!?」
隊員「人質と思われる人物を発見!記録照合・・・当銀行の警備員です。失神していますが目立った外傷はありません。」
隊長「ん・・・?下道か。篭城すると見せかけ此処から逃げたな。背後の地下路の出入口を集中的に固めろ。我々は追跡を続行する。」
隊員「隊長・・・」
隊長「爆弾処理班を呼べ。人質に爆発物が仕掛けられている。くっそー、入り口の奴は囮か。卑劣な時間稼ぎをしやがって!」
草薙素子(課長なら、この後どう逃げるかしら。)
隊長「早く外せ!」
隊長「なんだ!?」
爆弾処理班「只の目覚まし時計です。」
隊長「ダミーだとぉ!?他の追跡班はどうした!?出口で犯人を押さえたのか!」
隊員「全ての通路を封鎖しました。もう何処にも逃げられません。」

隊長「地下路の出入口も全て封鎖しましたが見つかりません。全員忽然と姿を消しました。」
署長「馬鹿な事を言うな。捜査範囲を拡大して川沿いを隈無く探し出せ。必ず捕らえるんだ。いいな!」
署長「一体何処に逃げたと言うのだ・・・」

草薙素子「ふぅ・・・」

草薙素子「ふふっ・・・あらあら、私が気付かなかったらどうするつもりだったの?」
荒巻大輔「お前なら気付くさ。」
草薙素子「遅れて悪かったけど、連中此処から中々離れなくってね。それとももっと遅い方が良かった?」
荒巻大輔「その場合温度と湿度に敏感なワインが犠牲になっただろう。かなりの本数を外に出したからな。」
草薙素子「ふぅん・・・隠しワインセラーと言う訳ね。」
荒巻大輔「高級ワインは保管する場所も違ったらしいな・・・今回はワインは諦めろ。そうすれば貴様等の事は見逃す事にしよう。お陰で裏帳簿の資料も手に入ったしな。」
男1「くっ・・・」
荒巻大輔「どうだ?あの状況下で命が助かっただけでも有難いと、思わんか!?」
男1&男2「う・・・」
草薙素子「いいの?このまま逃がしちゃって。未遂で終わったとは言え、一応立派な犯罪者よ?」
荒巻大輔「ふん、まあ構わんだろ。なにせ管轄外だからな。ふっ・・・」
草薙素子「ふふっ・・・」

署長「まだ発見出来んのか・・・?」
署長「見つかったか!?」
秘書「あのぉ・・・署長、荒巻と名乗る方がお見えですが。」
署長「何!?」

荒巻大輔「これは貴方とマフィアの癒着を証明する過去の不正取引の一切の資料です。後を残さない上手いロンダリング方法でしたが人命尊重は貫くべきでしたな。」
署長「い、一体今迄何処に隠れていたんだ!?」
荒巻大輔「真実はワインに有り。確かイギリスの諺でしたな。」

荒巻大輔「資料はこっちの公安に預けたよ。切っ掛けは作った。あとは彼等が捜査を進めるだろう。」
シーモア婦人「面倒な事に巻き込んでご免なさい。でもお陰で助かったわ。本当に有難う。」
荒巻大輔「何、成り行きで手を貸した迄だ。気にする事は無い。では、私はこれで失礼するとしよう。ご主人にも宜しく。」
シーモア婦人「え?ああ・・・これね。ずっと黙って様と思ってたんだけど、実はあの時結婚はしなかったの。それでもこっちに来たのは甘えを断ち切ろうと思ったから。これは男避けにしてるだけよ・・・ねえ、1日だけ帰国を延ばせない?」
荒巻大輔「いや、残念だが残して来た仕事が山積みなんだ。」
シーモア婦人「そう・・・じゃあこれお世話になったお礼に。」
シーモア婦人「本当は一緒に飲みたかったけど・・・」
シーモア婦人「安心して。これは私のコレクションよ。」

草薙素子「私は別に課長が帰国を延ばしてくれても構わないのよ。」
荒巻大輔「ワイン同様熟成に時間を要する人間関係もある。余計な気は使うな。」
草薙素子「へぇー。」
荒巻大輔「ん、これを持って税関審査は通れんな。少佐、ホテルに戻ったら一杯付き合え。」
草薙素子「あら、丁度良かった。昼間これ買っといたの。」
荒巻大輔「流石だな!」


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※1:Angel's Share 天使の分け前。樽で熟成中のウイスキーは蒸発し量が減る。その減った分を天使への分け前とし、分け前を取らせるからこそ上質のウイスキーを手に入れる事が出来ると考えられていた。

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