the Cat Met with Special Boxes.

第24話 孤城落日 ANNIHILATION

こじょうらくじつSunset in the Lonely City

粗筋

荒巻は一連の笑い男事件の背後に隠れている黒幕を挙げようと画策する。
が、公安9課を武力制圧する為に、所属不明のアームスーツが9課施設に次々と突入を開始する。
草薙は公安9課施設を放棄し、課のメンバー全員に逃走と潜伏を命じるが、追跡の手は既に潜伏先にも及んでいた・・・


登場人物

用語

セリフ

トグサ「只今戻りました。」
草薙素子「退院の許可は出てないんじゃないの?」
トグサ「やめてくださいよ、こんな時に。俺だけいつ迄も寝ていられません。」
荒巻大輔トグサを呼んだのは儂だ。資料は揃った。お前は儂と一緒に首相官邸に行って貰う。」
トグサ「はい。」
バトー「大丈夫なのかよ。まだ完治してねえんだろ?」
トグサ「任せろよ。」
荒巻大輔「うむ、この事件の発端を最初に探し当てたのはトグサだからな。」

complex episodes:孤城落日 ANNIHILATION※1

9課オペレーター:課長
荒巻大輔:何だ?
9課オペレーター内務大臣より緊急の通信が入りました。
荒巻大輔:うむ、繋げ。
内務大臣:荒巻君、儂だ。チャンネルW3を見ているかね?
荒巻大輔:いいえ。
内務大臣:ならすぐに見たまえ。
アナウンサー「内務省直轄の武装組織、公安9課のメンバーがセラノ・ゲノミクス社社長、アーネスト・瀬良野氏の誘拐未遂事件に関与していた疑いが出てきました。公安9課は内務省に編成された国際救助隊として認知されている組織ですが、予てより独自の権限に因る過度の情報収集や武力行使が懸念されていました。今回の事件から公安9課は2024年に起きた一連の笑い男事件に就いても関与していた可能性が高く」
トグサ少佐!」
内務大臣:私は臨時閣議に呼ばれている。とんだとばっちりだよ。君もすぐに来たまえ。その間答弁の内容でも考えて置くんだな。

トグサ「情報が事前に漏れていたって事ですか?」
荒巻大輔「慌てるな。作戦が動き始めた迄だ。儂等は予定通り首相官邸に向かう。」
荒巻大輔少佐
草薙素子:何?
荒巻大輔:お前達は何処から作戦が漏れたか調査しろ。
草薙素子:了解。

官房長官「この際、公安化の必要性を抜本的に見直す必要があるでしょう。存在が露呈した事に因って、醸成された社会不安は臨界点を超えている。総理、表向き内務省管轄ではあるが、貴方が直に命令を下す場合もおありと伺っておりますが?」
総理大臣「まあ、そういった事も無い訳ではないが・・・」
内務大臣「まあ、その、国際救助隊として設立された、実戦経験のある貴重な部隊であると言う事も又事実でして・・・」
防衛長官「自分の庭で何が起きているかも把握していない癖によく言う。大体戦後の混乱の中、当時の総理大臣の命令書か何かが元で、済し崩し的に承認されただけの暗殺部隊だろ。自衛軍を巡る9条問題も未だ出口が見えない状況で、民意は非常にデリケートだよ。」
外務大臣「取り敢えず、公安9課課長をここに呼ばない事には話が進展しませんな。」
総理大臣「皆さん失礼。すぐに戻りますので。」

総理大臣「どう言う事かね?今回の件で私は非常に苦しい立場にある。君も証人喚問に呼ばれるのは必至だ。今こうして会ってる事がどれだけ不都合か、想像出来ん君でもあるまい。」
荒巻大輔「承知しております。ですがこれを」
総理大臣「何かね?」
荒巻大輔「薬島幹事長に関わる重大な極秘文書です。」

トグサ「なんとか大捕り物には間に合ったかな。」

総理大臣「はあ・・・この金の流れについて事態を把握している者は君以外では誰かね?」
荒巻大輔「それをお読みになった総理と幹事長告発を決意した瀬良野氏、あとは私の部下だけです。」
総理大臣「そうか、分かった。薬島さんに対しては然るべき対応で処置を取る。但し、今は衆議院選の大事な時期だ。今回は国民とマスコミに花を持たせたい。薬島さん程の人を切るとなると、こちらにもそれなりの犠牲が出るのは止むを得んだろ。」
荒巻大輔「言っておられる意味がよく分かりませんが?」
総理大臣「特殊部隊法案の施行だよ。」
荒巻大輔「それは9課を捨てろと?」
総理大臣「そうは言っておらん。」
荒巻大輔「お待ち下さい!いつ如何なる時でも、私を信じて疑わない部下への信頼、それこそ私が今迄築き上げてきた財産の全てです!それを・・・!」
総理大臣「どうやら・・・その財産を使う時が来た様じゃないか。手筈は私が整える。君は部下を召集して置き賜え。案ずるな、君が居れば部隊は再建出来様。」

荒巻大輔「車を法務省に向けろ。」
トグサ「はい。」
荒巻大輔少佐、儂だ。
少佐:総理を上手く説得出来た?
荒巻大輔:メンバーを全員9課に集合させろ。
少佐:他に命令は。
荒巻大輔:死ぬな・・・必ず生き延びろ。

大佐:敵は思考戦車9機を所有している。3班4班は上空から降下しヘリポートから館内に潜入、最優先で戦車を撃破しろ。5班6班は迅速に7名の主要メンバーを捕獲、施設全体を制圧する。各員突入後は自閉しろ。敵は情報戦に長けている。力で捻じ伏せるぞ。

トグサ「課長。」
荒巻大輔「うむ。」
トグサ「着いて来ますね。」

トグサ「巻きますよ・・・!」

トグサ「うわっ!」

トグサ「課長!?」

男「お迎えに上がりました。貴方にはまだやって頂く事が残っています。」
荒巻大輔「この短時間で全ての手筈を整えるとは、総理の手腕、流石ですな。」
男「今ごろは9課も制圧されている事でしょう。」
トグサ「何だって!?ぐあっ!」
男「連れて行け。」
男「はっ!」
トグサ「課長!どう言う事なんですか?説明してください!課長!課長ー!」

バトー:このビルいつもと様子が違くねえか?それにこの召集、何だが妙だな。
草薙素子:今状況を説明している暇は無い。黙って私の命令を実行しろ。至急簡易義体を6体用意して司令室へ運べ。
バトー:ん?もしかして・・・
草薙素子:急げ。

イシカワ少佐、こりゃ一体どう言う事なんだ?」
草薙素子「この種を渡して置く。ここを出たら中の情報をメディアに流して芽かせろ。幹事長更迭には世論の後押しが必要だ。」

ボーマ「持って来たぞ。」
草薙素子「さっき課長から暗号通信を受けた。もう直軍の特殊部隊がここを制圧しに来るだろう。」
バトー「やっぱり特殊部隊規制法案が施行されたか。」
草薙素子「軍の出動が臨時閣議で承認される頃には全てが終了、よくある話よ。」
草薙素子「来たわね。出来るだけ時間稼ぎをしたらここを閉めるぞ。」

隊員「ハンガー内を制圧、思考戦車の姿は確認出来ません。」
大佐「待ち伏せに注意しろ。」
隊員「大佐!端末に思考戦車をラボに送還した記録が残っています。」
隊員「糞、上からの情報はいつもこうだ。」
大佐「無駄口を叩くな。現場の状況は刻時変化する。全ての可能性を考慮しつつ隊を展開しろ。」

バトー「おー、お出でなすった。」

バトー「行くぞ!おるあ!」

草薙素子イシカワ!館内のスクリンプラーを作動させろ。」

ボーマ「駄目か。」

大佐「只の水だ。2班、援護にまわれ!強化外骨格で一気に畳み込む。」

草薙素子「後退するぞ!あの装甲じゃ幾ら撃っても足止めにならない。」

イシカワ「何処の部隊だ?かなりの手練だな。」
バトー「ありゃあ海坊主だ。」
イシカワ「海坊主?」
バトー「ああ、根室奪還作戦に参加してな。裏の世界じゃ有名よ。存在しない事になってるから、正式な名称はねえがな。」
草薙素子「そろそろ潮時だ。脱出するぞ。」

大佐「状況を確認しろ。負傷者の収容を急げ!」

隊員「どうやら9課の人間が自爆を試みた様です。」
大佐「自決と見せかける偽装の可能性を考慮しろ。そのまま警戒を怠るな、捜索を続行!」
隊員「了解!」

タチコマ「あーあ、もうしょうがないなあ。駄目でしょ!お茶こぼしちゃ。んしょ。」
職員A「頑張ってますねタチコマちゃん、働き者だし、お爺ちゃん達ともすぐ仲良くなってくれたし。」
タチコマ「ああん、ここもだよ。んしょ。あー!これはお茶じゃないよ!ここもだ!んしょんしょ。」
職員B「ほーんと助かるわあ。でもあれってどっかの機関からの払い下げなんでしょ?もっと無いのかしら?」
職員A「そうですね。でも元々は何をするロボットだったんですかね?」

タチコマ「ほらほら、ニュースやってますよ、テレビ見ましょ。」
アナウンサー「番組の途中ですが、公安9課に関するニュースが入りましたのでお伝えします。」
タチコマ「お?」
アナウンサー「公安9課の武装解除を求めた臨時閣議で、軍の出動を視野に入れた特殊部隊規制法案を施行しましたが、度重なる勧告にも応じず一定交戦の構えを見せる9課に対し、先程軍の特殊部隊が施設への突入を開始した模様です。現場からの中継です。」

実況「たった今軍の特殊部隊が公安9課の施設のあるビルに」
タチコマ「これって・・・9課じゃないか・・・?」

イシカワ「今の所追っ手は来ていない様だな。」
草薙素子「大した時間稼ぎにはならない。使い込んでない電脳ばかりだったからな。」
バトー「で?これからどうすんだよ?」

草薙素子「課長は私に死なずに生き延びろと言った。私も同意見よ。ここからは3方向に別れ追っ手を分散させる。その後は各自バラバラに散って街に潜伏しろ。公安9課は本日をもって解散する・・・以上だ。」

隊員「損傷が激しいですが、恐らく6名の死体と思われます。電脳の使用痕跡も解析中です。」
大佐「結果が出る前に第5班を呼べ。偽装工作を想定し、エレベーターシャフト、排気口、下水等考えられる全ての通路を封鎖しろ。」
隊員「はっ。」

草薙素子「先に行って。」
バトー「いや、お前が先だ。追っ手が掛かった時、俺の体で通路が塞がる。」
草薙素子「敵が出口で待ち伏せしてたら?」
バトー「そん時に俺が先頭に立って穴塞いでたらお前は何処に逃げんだよ?」
草薙素子「ふっ。」

バトー「とうとう9課もお仕舞いだな。折角今迄築いて来たもんがパーになっちまった。」
草薙素子「そう?最新のメンテや最高級の装備を湯水の様に使えたのは良かったけど、それだけよ。また新しいスポンサーを探すだけ・・・それとも何?バトーはあそこに何か未練でもあった訳?」
バトー「んん、そういやねえか。まああるといえば思い出位なもんか。」
草薙素子「思い出?随分感傷的ね。」
バトー「そういやお前、いつもしてる腕時計、あれどうした?」
草薙素子「今日に限ってセーフハウスのベッド脇よ。9課がやられたって事はそっちも押えられているでしょうね。」
バトー「いいのかよ、あの時計・・・お前が義体のリサイズやめた時の記念に貰ったもんじゃなかったっけ?誰からかは知らねえけどよ。」
草薙素子「知ってたの・・・でも勘違いしないで、別に感傷でしてたんじゃないから。」
バトー「女性型の義体を捨てねえのも、時計の鎖が締まる様に細い腕にこだわってたからじゃねえのか?義体や脳殻は換えられるだろ。でもよ、代わりが利かない物もあるだろうが。」
草薙素子「なあに熱くなってるの?状況に応じて義体も脳殻も変えて来た・・・なら記憶も変える迄よ。」

草薙素子「無駄話はお仕舞い。ここを抜けたら二度と連絡は取れない。再び出会ったとしても今の私ではないかもしれない。バトーも自分が生き延びる事を第一に考えなさい。」

トグサ「だから何度も言う様にそんな事実は無いって・・・」
刑事「じゃあ何故9課の構成員が笑い男に成り済まして、社長と接触していたんだ?」
トグサ「だから、それは。」
刑事「何だ?」
トグサ「大体6年前には9課自体存在してないだろ!どうやって笑い男事件と関われるんだよ!?」
刑事「データの改竄位お宅等に取っちゃお手のもんだろ。」
トグサ「はあ・・・!?いい加減にしろよ・・・6年前は俺も本庁の捜査員だぞ。」
刑事「よーし、もう一回、最初から行くぞー。」

パズ「ここで別れよう。」
ボーマ「だな。」

パズ少佐の代理で来た。いつもの酒はあるか?」
ベロニモ「ごめんよ・・・義体の借金があるもんで・・・」

パズ「ぐっ!」
隊員「死にたくなければ無駄な抵抗はやめろ。」
パズ「くっ・・・もうこんな所迄調べだしたのか・・・」

ベロニモ「普通姉さん以外の仕事は受付ないんだが、非常事態に就き特別って事にしておくか。」

タチコマ「よし!よし、よし、よし、あよしと。」
タチコマ「お?」
老人「むにゃむにゃ、戦況は悪化しとる・・・」
タチコマ「みんな・・・」

大佐「どういう事です?アームスーツ隊を撤収させるとは!?万全を期さずに倒せる相手ではありません!」
通信相手「制圧は確認した。現時点で目立つ動きは得策ではない。」
大佐「分かりました。」

大佐「アームスーツを2機残して後は撤収させろ。」
隊員「了解。しかし・・・」
大佐「全機戻せとは言われていない。急げ!」
隊員「はっ。」

バトー「まあ自分の命だし、何に使おうが自由ってこった。」


脚注
※1:annihilation 滅ぼすこと、全滅、絶滅、壊滅、消滅、無効、対消滅、寂滅の意。

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