the Cat Met with Special Boxes.

第6話 潜在熱源 EXCAVATION

せんざいねつげんLatent Heat Source

粗筋

エネルギー省を脅迫していた男が謎の死を遂げた。
荒巻は事件の真相を探るべく、招慰難民居住区と化した東京トグサを向かわせる。
トグサはそこで、男と交際していたと言う女性「アサギ」に出会う。
アサギは亡くなった男の無実を訴え、トグサと共に、男が東京を出る間際迄働いていたと言う場所を突き止める。
だがそこは、政府がひた隠しにしている、あってはならない施設だった・・・


登場人物

用語

セリフ

トグサ「事故に見せかけた他殺、ですか?」
荒巻大輔「捜査員の話では脳殻に確実なダメージを与える様に轢かれた可能性が高いそうだ。」
トグサ「でもトラックの運転手は居眠り運転だった為に記憶が無いと・・・」
9課鑑識「念の為運転手の電脳を洗ってはいるが何も出ないだろう。」
トグサ「エネルギー省を脅迫してきた犯人の線は途絶えてしまった訳ですね。」
荒巻大輔「この男が単独犯であればな。」
9課鑑識「該者の義体は2902式トヨダケミカル製、脳殻はデルモ製2706式改、どちらも型落ちながら新品の国産機種だ。外装も市販の標準モデルでオプションは付けてないが顔のみオートクチュール、しかし細胞の劣化から考え、初めに義体化した時からの使い回しだろう。」
トグサ「犯罪者としてはちぐはぐな換装パターンですねえ。」
荒巻大輔「ん、それに脅迫の手口もお粗末なものだった様だ。エネルギー省のスキャンダルと言う情報その物がはったりだったと言う可能性もある。」
トグサ「なのに暗殺まがいの手口により身柄を確保する寸前で死亡してしまった・・・ん?この刻印は?」
9課鑑識「旧首都にあった新宿区のマークの様だ。」
トグサ「大戦で水没した?」
9課鑑識「ああ。この脳殻は何故かガラスと鉛でコーティングが施されている。それはその時に刻まれた様だ。」
荒巻大輔「男の所持品だ。ルポライターの連絡先が書かれている。身元を洗う上での手掛かりになるだろう。」
トグサ「こっちは・・・マリッジリングですかね?」

dividual episodes:潜在熱源 EXCAVATION※1

三橋「内の事務所に会って欲しいと連絡があったのは確かです。」
トグサ「成る程。」
三橋「かなりきな臭い垂れ込みだったんですが、連絡してきたのは東京の公衆端末だったようで・・・」
トグサ東京?で、その垂れ込みの内容ってのは?」
三橋「エネルギー省にまつわる醜聞で奴ですよ。」
トグサ「そんな垂れ込みを一々チェックしてちゃあ仕事にならないだろ?」
三橋「まあ実際に会う事は稀なんですが、ネタの証拠になるものを送るって言うんで。」
トグサ「真っ黒だ。」
三橋「ええ、何かの証拠写真だったのでしょうが完全に感光している。デジタルデータでは証拠能力がないと思ったんでしょうね。今時フィルムを扱える人間は少ない。」
トグサ「これ、一応預かってもいいかな?」
三橋「いいけど、本当に何も写ってないですよ?」

トグサ:課長、どうやら男は殺される数日前迄東京都内にいたようで、そこからルポライターに感光したフィルムを郵送したようです。」
荒巻大輔:よし、お前はその足で東京に飛べ。その間に使用端末の割り出しを済ませておく。」
トグサ:俺一人でですか?
荒巻大輔:他の者は皆、総理の身辺警護を継続中だ。タチコマを一機つける。
トグサ:放射能って大丈夫ですかね?
荒巻大輔:大戦から何年経っていると思ってる。『日本の奇跡』散布以来、残留放射能は確認されておらん。
トグサ:了解。

アナウンス「新東京、新東京、只今到着した電車は」

タチコマ「残留放射能が気になるなら義体化する事をお勧めしますが?」
トグサ「そんなんじゃないよ!つい気分的にな・・・」
タチコマ「気分が悪いの?なんならポッドに入れてあげてもいいけど?」
トグサ「その方が酔いそうだ。いいから黙ってついて来い。」
タチコマ「む、どーゆう事おー!?」

トグサ「ここからかけたのか。」
タチコマ「お?お?」

タチコマ「ひ、ひ、ふ、お!おお!おおぉー!うはっはー!」

トグサ「この男見なかったかな?」
親父「ああ?知らねえなあ。」
トグサ「この辺りで義体を新しくした筈なんだが。」
親父「さあな、この辺の連中は皆最低限の機能だけで我慢してる奴ばかりだしな。」
男「俺にも見せてみな。この所尋ね人が多いから、知ってるかも知れねえぞ?」
トグサ「この男だ。」
男「どれ。ああ、やっぱりこいつの事か。」
トグサ「知ってるのか?」
男「こいつの事は知らねえ。だが4、5日前にもこの糞暑い中、黒スーツを着込んだ男に聞かれたよ。物騒な顔した男だったなあ。それについさっきも寄せ場の辺りで若い姉ちゃんが同じ奴を捜してた。一体何をやりやがったんだ?この色男は。」
トグサ「大した事じゃないんだ。ありがと。」

アサギ「すいません。コタン・カンジと言う人を知りませんか?」
男「ああ、知ってるよ。」
アサギ「本当ですか?」
男「ああ、来な。」

タチコマ「やっぱりあんな掘り出し物※2は滅多に見つからないんだなあ。はあ・・・あれ?トグサくん・・・は?糸・・・あ、切れちゃったかな?」

アサギ「あ・・・あ・・・」

トグサ「痛い目に会いたくなかったら消えろ!」

トグサ「大丈夫か?」

荒巻大輔「連絡のあった男だが、関東招慰難民居住区に確かにコタン・カンジと言う名前の男がいた事は確認出来た。」
トグサ「そうですか。一応保護した女に死んだ男の写真と指輪を見せましたが、コタンのものに間違いないと証言しています。」
荒巻大輔「その女は?」
トグサアサギ・ルリコ、2年前に難民支援のNGOに参加していたそうで、その時コタンと知り合ったようです。その後もお互いに連絡を取り合い、いずれは一緒になる約束迄していたようですが、コタンからの連絡が途絶えたのが3ヶ月前。そして、1週間前に突然別れを告げるメールが届き彼女はコタンを捜しに秋田から上京して来たようです。」
荒巻大輔「分かった。引き続き女から事情を聞け。」
トグサ「了解。」

トグサ「落ち着いた?」
アサギ「はあ・・・死んだのね、コタン・・・これ、コタンが送ってくれたものなんです。もうすぐ難民街を出られるからって。でも、いざIDを取得しようとした時、コタンの義体が審査に引っかかった。必要最低限の性能が備わっていなかったから。その事が分かるとコタンは私を、避ける様になった。私が規格の事を隠していたと思ったのかもしれません。」
トグサ「君の方から連絡は取れなかったのかい?」
アサギ「何度も取りました。新しい義体を手に入れられるよう私も協力するって。でも彼はそれを拒んだ。」
トグサ新浜で見つかった時、コタンは国産の義体に乗り換えていた。彼からその話は聞かなかった?」
アサギ「いいえ、聞いてないわ。」
トグサ「そうか。」

トグサ「彼には、実は死ぬ前にある国家機関を脅迫して金を脅し取ろうとした容疑がかかってるんだ。」
アサギ「え?」
トグサ「君の話を聞いていてコタンは義体を手に入れる為に脅迫を考えたのかとも思ったけど、既に義体は換えられていた訳だからなあ。何故義体を手に入れた後に彼は脅迫事件を起こしたのか。」
アサギ「コタンは不遇な生活を強いられてはいましたが、犯罪に手を染める様な人ではありません!」
トグサ「かもね。だけどコタンの死は事故ではなく何者かによって殺された可能性があるんだ。」
アサギ「え?」
トグサ「君との連絡が疎遠になった3ヶ月の間に彼の身に何かが起こった。明日寄せ場を洗ってみるか。」

男「一月位前だったかなあ、完全義体の労働者を大勢集めている奴がいるって言う噂が広まってよ。なんでも内環七迄行く気のある奴にゃあいい義体を只でくれると言う話だったらしいや。」
トグサ「只で?」
男「んむ。」
トグサ「その内環七ってのは?」
男「水没してる一帯の事だ。だが実際義体を貰ったって奴も聞かねえから、ありゃあ只の噂だったのかも知れねえなあ。」
アサギ「この人が新しい義体を貰ったらしいんです。」
男「ふーん、おい!誰か例の義体が貰えるって話を知ってる奴はいないか?この男が本当に全身義体を貰ったそうなんだ。」

男A「今の俺が生きているのは先生のお陰なんだ。」
トグサ「先生?」
男A「ああ、内環七じゃ俺に色んな事を教えてくれたよ。」
アサギ「そこで何があったんですか?」
男A「俺にもよく分かんねえ。只、言われるままに仕事をしてただけなんだ。」
トグサ「雇い主は覚えているか?」
男A「確か黒松電設とかそんな名前だった。なんでも戦争で埋まった施設を発掘するって事で大深度地下迄潜るから全身義体に換装してから集まれと言われたんだ。俺は義体化率98%って条件で一度は諦めたんだ。けど、ヤミ医者が義体化率ごまかしてくれて潜り込めたんだ。」
トグサ「その義体にこのマークは入ってたか?」
男A「ああ、みんな入ってた。先生は新しい義体に換装出来た事を偉く喜んでいたよ。自分で自分の脳殻なんて見れねえから本当にその新品を貰えたかなんて分からねえのによ。それで結局40人位の労働者が集められて大深度地下に入ったんだ。俺以外にも義体化率ごまかしてた奴がいたっけ。で、俺は先生と組んで作業を始めた。確かネッコウとか言ってたな。防塵マスクは着けていたが、鼻の中迄真っ黒になった。先生は感覚器官をカットしておけば大丈夫だって言ったけど、俺は全身義体じゃねえからそんな事は出来ねえって言った。そしたら先生、偉く怖い顔になってすぐにここを出ないとお前は死ぬって言い出した。でも、どうしても金が欲しかったから俺、言う事を聞かなかった。それで先生はもしこれが黒くなったら急いで逃げ出せってこいつをくれたんだ。そして仕事を始めてから4日目に偉い事が起こった。突然サイレンが鳴り出して何かと思っている内に奥の現場から技術者みたいな連中が担架に乗せられて運び出されて来た。それで、この仕事が相当やばいってやっと分かった。」
トグサ「それで逃げ出したのか。」
男A「ああ。気付くと黒尽くめの連中が入って来た。俺と先生は上手く外に出られたけど、逃げ出す途中でちらっと見たら一緒に行った奴等はそのままでっけえ鉄の扉に閉じ込められちまった。」
アサギ「その後コタンはどうしたんですか?」
男A「なんでも、自分はトンネルの奥で見た事を世間に広めなくてはならないとか言ってどっかに行っちまった。」
トグサ「その内環七って所に案内してくれないか?」
男A「馬鹿言うな!あんな所金貰ったって戻れるかよ。」
トグサ「途中迄でもいいんだ。」
アサギ「お願いします。私もそこでコタンが何を見たのか知りたい。」

トグサ陸自が来てる。」
男A「俺が逃げた時はあんなフェンスはなかった。」

男A「ここから入れば同じ場所迄行ける。悪いけど、俺はここ迄だ。」
トグサ「いいよ。有難う。」

トグサ「これは・・・!」

トグサアームスーツ!」

トグサ「くそっ!」

トグサ「飛べ!早く!」

トグサ「 早く!」

アサギ「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

タチコマ「大丈夫?トグサ君」
トグサタチコマ!」
タチコマ「えっへん!」

トグサ「コタンは君と暮らす為に危険を承知であそこに行ったんだろうな。たまたまあそこが何の施設なのかを知り得る知識があった為に、殺された。」
アサギ「一度帰ってコタンを迎えに行きます。」
トグサ「ああ。何かあったらすぐに連絡してくれ。」
アサギ「はい・・・」

トグサ「コタンは大深度地下に隠された原発で事故に遭遇、それをネタにエネルギー省を脅した。もしかしたらこのスキャンダルを世間に知らしめようとしたのかも知れませんけど。」
荒巻大輔「そうか、察するに作業中に臨界事故が起こり慌てて埋めさせたといった所だろうが、軍は事情を把握しておらん様だ。問題は大戦前の遺物を掘り出させたのは何処の管轄で何を目的としていたかだな。」
トグサ(あの黒スーツ・・・)
荒巻大輔「まだ裏がありそうだな。戻り次第報告書を纏めておけ。」
トグサ「了解。」


脚注
※1:excavation (掘って出来た)穴、切り通し、穴掘り、発掘(物)、出土品。

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