the Cat Met with Special Boxes.

第7話 協奏は亡国の調べ Pu239

きょうそうはぼうこくのしらべThe Rhapsodic Melody of a Bygone Nation

粗筋

新宿地下原発から回収された燃料棒を輸送する計画が、何者かによってテロリストに漏洩された。
政府は急遽、陸路における輸送を9課に依頼する。
代表として作戦指揮をとる為、再び現れるゴーダ。
その事に不満を感じつつも、9課は現地の陸自隊員と共に輸送を開始する。
だが、陸自隊員の難民への発砲が、事態を急変させてしまう・・・


登場人物

用語

セリフ

武器商人「ボートと義体用フローターはこのアドレスに置いてある。それにしてもこれっぽっちの武器で何をするんだ?」
男「後押ししてやるのさ、難民開放を。」
武器商人「大変だなあ、奴等も。ま、金さえ貰えればどうでもいいけどな。」

武器商人「おい、なんだ、これは?」
男(予定通りか。)
武器商人「くそっ!」
武器商人「おいっ貴様!俺達を売ったな!?」

dual episodes:狂想は亡国の調べ Pu239※1

草薙素子「総理を狙ったハイスペックの義体男の照合はどうなってる?」
バトー「軍関係者を中心に洗ってはいるが、今ん所該当者無し。」
イシカワ「支援ヘリの暴走の一件以来、軍のガードが異常に固くなっていてな。しかも例のハイスペック義体だが、過去、自衛軍ではPKFとして派兵された部隊が換装した以外に記録は無い。だが何故か当時のPKFの名簿はおろか、作戦の記録迄ごっそり消えて無くなっているんだ。」
草薙素子「メンテナンスフリーの、PKF仕様か。トグサ、新宿原発の件で動いていたと言う組織の方は?」
トグサ「こっちも具体的な事はまだ・・・」
草薙素子「新内閣発足後、新たに台頭してきた公的機関。しかも自衛軍に対して風通しのいい連中。11機の暴走ヘリ、それに呼応する様に姿を見せ始めた個別の十一人。そして新宿大深度地下に隠蔽されていた原子力発電施設。」
バトー「抱え込んだ問題は山積みだが、その原発から掘り出された、ブツに絡んで、課長の野郎また首相の所に呼び出されてるようじゃねえかよ?」
草薙素子「ええ、何か不満でも?」
バトー「大有りだ。大体おかしいと思わねえのか?たしか9課は攻性の組織だった筈だろ。なのにこう首根っこ押さえられてちゃ、何一つ先手を打つなんて出来やしねえじゃねえか。」
草薙素子「否定はしないわ。でも課長もそう思っているでしょうね。」
バトー「だったら何故!?」
草薙素子「9課にとって、最大の敵って何だと思う?」
バトー「何だよ?突然・・・」
草薙素子「それは、数だ。それも圧倒的物量の前では我々の様な組織は為す術も無く敗北する。今の状況その物が、我々に対する攻撃だとしたら、何処かで何かが動き始めているって可能性は、考えられない?」

総理「先日、新宿大深度地下原発の埋め戻し作業中に、プルトニウム燃料棒が回収された事はご存知ですね?」
荒巻大輔「一応は耳にしております。」
総理「実はその燃料棒を極秘裏に移送する計画が進行していたのですが、その情報が事前にテロリストに漏れていた様なのです。新たな国民として開放が待たれる難民の足元で、政府が行った愚行に対し、我々は天罰を加える所存である。難民の手で難民の土地より掘り出されし物は、難民の手に返される事が妥当であると我々は考える。個別の十一人。」
内務大臣「例のマークも入っている。その声明を受け、海上保安庁が武器の取引の現場を押さえる事には成功したのだが、そこでとんでもない数の銃器が取引された可能性が出て来てね。」
総理「当初、移送計画は海路を使ってと考えられていました。ですがテロリストの残した受領書から、海上での襲撃が予測される為、急遽計画を変更する事になった訳です。」
荒巻大輔「それで陸路での移送を9課が担当しろと言う事ですかな?」
男「その通りだ。君達は表向き存在しない事になっている。元来存在してはならない戦前の遺物を運び出すには、持って来いと言う訳だ。」
荒巻大輔「成る程。総理はその件についてはどう?」
総理「的確な判断だと、思います。」
荒巻大輔「分かりました。」
荒巻大輔「総理、一つよろしいですかな?」
総理「何でしょう?」
荒巻大輔「貴方は新宿原発の存在について何処迄ご存知でしたか?」
総理「プルトニウムが見つかったとの知らせを受けて初めて・・・」
荒巻大輔「そうでしたか。失礼します。」

荒巻大輔「作戦の内容は事前に説明した通りだ。例の原発から掘り出されたプルトニウムを難民居住区から陸路を使って運び出す。」
トグサ「どういう事なんですか?やはりあれは政府主導による極秘の発掘計画だった。なのに何故・・・」
バトー「親父、9課はいつから総理の使いっ走りに鞍替えしたんだよ?」
荒巻大輔「鞍替え等はしてはおらんよ。」
バトー「だったら!」
草薙素子「今は誰かに先手を取られているだけ。そうなんでしょう課長?」
バトー「お前は!」
ゴーダ「やあ、どうも。私の初めての降下作戦に君達が同行してくれるとは心強い限りだ。」
バトー「てめえが何だってこんな所に顔を出しやがるんだ?しかも俺達と一緒だと!?」
ゴーダ「全くだ。斯くも下らん戦中の遺物の後始末を、何で俺が?と本気で頭に来るよ。ああこの前はどうも。」
トグサ「誰なんです?」
草薙素子内閣情報庁、戦略影響調査会議代表補佐、合田一人。」ゴーダ「嫌な仕事をさせて」
トグサ「あいつが・・・」

オペレーター「隊長、予定通り迎えの部隊が新浜を出発したようです。」
隊長「そうか、このまま何事も起こらなければいいがな。」
オペレーター「そうですね。」

隊員「ほら。」
隊員「ははは、まるで動物園の猿ですよねえ。」
上官「やめとけ。感情を逆撫でする様な事を言うな。」
隊員「金網を越えたら射殺か国外退去、あいつ等だってそれ位分かってますよ。」

荒巻大輔「と言う事は、現地の自衛軍は自分達が何を守っているのかも知らされていなかったと言う事か?」
ゴーダ「その通りだ。知らなくていい事は世の中に山ある。事後、情報操作を速やかにこなしていく為にも、真実を知る人間は最小である事が望ましい。」
トグサ「だったらこの作戦全部を、あんたら内庁がやったらどうなんだ?大体」
草薙素子トグサ。」
ゴーダ「君は初めて見る顔だな。最近何処かで・・・」
トグサ「んん・・・!?」
草薙素子イシカワイシカワ「ああ、そろそろ到着する。」
草薙素子サイトーパズボーマ、トラックを現地調達したら2200迄に合流しろ。」
サイトーパズボーマ「了解。」
草薙素子タチコマも連れて行け。」
ゴーダ「今回は思考戦車の使用は中止して貰いたい。」
バトー「てめえ!」
ゴーダ「難民を刺激したくない。」

草薙素子「ゴーダさん、作戦の全権が貴方にある事は理解したが、現地では我々の指示に従って貰う。でないと命の保証は無い。では彼とタンデムを。」
ゴーダ「宜しく。」
草薙素子「先に出るぞ。」
バトー「さあて俺達も行くか。」
ゴーダ「こういうのは苦手でね。」
バトー「そいつは良かったなあ。」
ゴーダ「うぅああ!」
荒巻大輔「よし、行け!」

ゴーダ「うああ・・・!」

ゴーダ「うう・・・!」
バトー「愚図愚図するな、行くぞ。」
ゴーダ「くっ・・・!」

隊長「こいつがプルトニウムだと言う連絡を受けてからは、冷や汗が出っ放しだったよ。」
草薙素子「ご苦労。後は我々でこれを難民居住区の外に運び出す。」
隊長「そうはいかん。部下が被曝した可能性もあった訳だ。」
ゴーダ「大丈夫だ。そんな心配はない。」
隊長「背広組に何が分かる!?」
ゴーダ「背広組に失望するのは結構だが、これは政府の方針だ。各セクションには決められた仕事がある。それが嫌なら制服を脱げばいい。」
隊長「ぐっ・・・!」隊員「ん・・・!」
ゴーダ「だが、これでは君達も気持ちが収まらんだろう。そこで一つ頼みがあるんだが・・・有線で話そう。」
バトー「おい!」
ゴーダ「気にするな。尻拭いが背広組みの仕事だ。」

隊員「隊長、車両が到着しました。」
隊長「分かった。内からは副官と歩哨を2名出す。それが譲歩案だ。」
草薙素子「よし、車両に補強を施し次第出発する。」

草薙素子「よし、出るぞ!」

トグサ「なんとなく不気味ですね。」
草薙素子個別の十一人が、プルトニウム強奪を計画していた可能性は否定出来ないが、難民と組んでいる訳ではない。警戒するに越した事は無いが、疑心暗鬼になるな。」
トグサ「そうですね。」
草薙素子「それより、海上移送の情報が何処から漏れたのかが気になる。」
トグサ「確かに。」
ゴーダ「このバスにプルトニウムが積まれていると知ったら、あいつ等もさぞ驚くだろうな。」
バトー「下らねえ無駄口利いてるんじゃねえよ。」
ゴーダ「ふふふ、私は君達と違って喋りが身上なもんでね。」

隊員B「無邪気なもんだな。」
ゴーダ「おい、知ってるか?長崎の難民居住区じゃ、あの位の少女が警官に発砲した事件が起きたばかりだ。」
隊員B「うっ・・・」
バトー「味方を不安にさせてどうする?」
ゴーダ「ふっ、君の所はかなり鍛えられている様だ。あの女隊長はかなり怖そうだしな。」
バトー「そうでもねえよ。」
ゴーダ「ほう、時に君は何故彼女の隊に?もしかして彼女に惚れている・・・なんて事は無いよなあ?ふんっ。」
バトー(ふざけた野郎だ。)
草薙素子イシカワ、ルート検索は?
イシカワ:衛星からの情報を送る。
草薙素子:高架になってるな。危険じゃないのか?
イシカワ:旧高速迄行けば、もう難民地区は抜けている。あとは横須賀基地からの迎えに荷物を預ければ完了だ。寧ろ危険なのは、環状道路の方だな。殆どのビルが倒壊したまま廃棄されていて、道の両側を塞いでいる。もしテロリストが待ち伏せていたら、一溜まりも無い。
草薙素子:大した作戦だ。
草薙素子(ゴーダの奴、何を考えてる?)
草薙素子イシカワ、ルートを一通り洗ったら奴の裏を探ってみろ。
イシカワ:ああ、そのつもりだ。

トグサ「大戦から30年、未だに関東をこのままほったらかしにしてるのも、元はと言えば、難民問題を有耶無耶にし続けて来た付けでしょう?そろそろ、臨界点なのかもしれませんね。」
草薙素子「んっ・・・!?」
隊員A「ん?おい。」
草薙素子「分かってる。」
草薙素子バトー
バトー:こっちからも見えてる。嫌な感じだ。

草薙素子イシカワ、見えるか?
イシカワ:ああ、横転事故か?
草薙素子:分からん。調べてみる。
ゴーダ「安全を考えれば迂回だな。我々の積荷が何かを考えれば、戦闘状態に陥る様な事は極力避けなければならない筈だ。」
草薙素子「分かっている。その為の現地迷彩だ。まず斥候を出す。だがあの中にテロリストが潜んでいたら、腹を括るしかあるまい。」
ゴーダ「いいだろう。で、人選は?」
草薙素子「私とサイトーで行く。こっちはバトーが指揮を執る。」
ゴーダ「よし、私も行こう。これでも難民には受けがいいんだ。それと陸自の一人も。君の部下は殺気がありすぎる。」

草薙素子「どうした?」
難民A「見ての通りだ。あんたら西地区か。」
草薙素子「まあな。我々は先を急ぎたい。」
難民A「俺達だって急ぎたい。」
草薙素子「悪いが手を貸している暇は無い。先に行かせて貰うわ。」
難民A「好きにしな。」
草薙素子:トラックの脇はバスが通れる十分な幅がある。ゆっくり近づいて、様子がおかしくなったら、我々を置いて突破しろ。
バトー:了解。

草薙素子:異常は無い。そのまま進め。
隊員B「くぅ・・・んん・・・!?」

難民B「なんだあ?」
隊員B「あぁ・・・!」
草薙素子バトー
バトー:ああ。
難民C「援軍か?」

隊員「ああ・・・!?」
ゴーダ「おい、あいつ銃を持っているぞ。」
隊員「んん・・・!?」

草薙素子トグサ、行け!」

パズ「乗れ!」

草薙素子「どうだ?」
ボーマ「異常なし。」
パズ「異常なし。」
サイトー「異常なし。」
バトー「おかしいな・・・」
草薙素子「只の難民だったのか・・・?」
サイトー「無駄な殺生をしたな。」
隊員B「ううっ・・・!」

荒巻大輔「ご苦労だった。武装テロの情報はブラフだった様だな。」
草薙素子「幸い徒労に終わったわ。」
ゴーダ「荒巻さん、今回も9課は実にいい仕事をしてくれた。感謝しますよ。」
バトー「嫌味のつもりか?」
ゴーダ「本心さ・・・」
荒巻大輔「ん?」
バトー「おい!」
トグサ「やめろ!」
バトー「貴様あの時・・・!」
ゴーダ「今頃はキャンプを引き払った陸自の第2架設小隊が、プルトニウムを海上に送り出しただろう。」
荒巻大輔「我々を囮に使ったな?」
バトー「俺達を何だと思ってやがるんだ!?」
ゴーダ「お前達こそ自分を何だと思っているんだ!?少数精鋭の選りすぐり部隊か!?そんな物流出した重火器で武装した難民共が、大挙して押し寄せていたら手も足も出なかっただろう。私の演出で囮役を演じられただけでも有り難いと思いたまえ。失礼する。」


脚注
※1:plutonium 239 プルトニウム239。

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