the Cat Met with Special Boxes.

第10話 イカレルオトコ TRIAL

いかれるおとこOne Angry Man

粗筋

非番中、事件に巻き込まれた被害者を助けるべく、犯人に発砲してしまったトグサは、弁護士のウエダの強引な策略により法廷に引きずり出される。
その過剰な遣り口に何かを感じた草薙は、背後にゴーダの存在を突き止める。
追い詰められ、既に最後の証言台に立たされていたトグサは、己の辞職と引き換えに、ある行動に出るが・・・


登場人物

用語

セリフ

トグサ「途中で寄って買っていくよ。」
トグサの妻「助かるわ、サイズとか分かってる?」
トグサ「ああ、履かせるタイプのLだろう?」
トグサの妻「うん、じゃあ宜しくね。」

シズノ「助けて!」

イズミ「何故俺から逃げる?」

イズミ「何だ?その目は。」

トグサ「やめろ!」
トグサ「銃を捨てるんだ。」
イズミ「痛覚を切ってるから効かないぞ。」

イズミ「ちっ・・・」

トグサ「大丈夫か?怪我は?」

シズノ「あ゛うっ!」
イズミ「ひっひっひっひっひっひ・・・」
トグサ「貴様!殺されたいのか!?」

dividual episodes:イカレルオトコ TRIAL

刑事「発砲した弾数は計12発、それで間違いありませんか?」
トグサ「ええ、間違いありません。」
刑事「もう少し勾留は続きそうだ。」
トグサ「どういう事なんです?自分は公安9課の」
刑事「分かってる。だが略式裁判が執り行われる可能性が出た。」

ウエダ「初めまして。貴方のご両親の依頼されて、弁護を引き受ける事になりましたウエダです。」
イズミ「助かった。早いとこ新しい義体何とかならないかな?痛みは無いのに苦痛でしょうがねえ。」
ウエダ「大丈夫。2日以内には出られますよ。それにしてもそれだけ銃弾を撃ち込まれては苦痛でしょう。本当はあれは事故だったんじゃないですか?」
イズミ「ああ?」
ウエダ「その義体、何度もモディファイ繰り返してますよね?」
イズミ「あ、ああ。」
ウエダ「メーカーの違うパーツを組み合わせてる様だし、制御ソフトもその都度上書きしている。」
イズミ「何が言いたい?」
ウエダ「私は義体関係専門の弁護士です。従ってこう言った事情には詳しい。何かの弾みで制御機能がおかしくなる事は通常でも起こり得る。」

検事「起訴状、先被告事件について公訴を提起する。2032年9月9日、新浜地方検察庁検察官検事、モリ・カズオミ。新浜地方裁判所殿。本籍、新浜県。住所、新浜市住吉台2-B-5。無職。イズミ・カツヒコ。2009年6月18日生まれ。公訴事実、被告はかつて交際していた新浜市立病院の看護士、シズノ・ユカリ、当時24歳、に度々復縁を迫るも拒否され」

トグサの妻「納得いかないわ、犯人でもないのに貴方が勾留されるなんて。」
トグサ「俺だってそう思うけど、裁判を迅速に終わらせる為なんだ。それに、人命救助の為とは言え、勤務時間外に発砲したのは事実だし・・・」
トグサの妻「銃を持たなくちゃいけないのなら、今の警備会社辞めたっていいのよ?」
トグサ「仕事辞めて家族4人どうやって食っていくんだよ?俺は大丈夫だ。」

トグサ「課長、態々すいません。」
荒巻大輔「過ぎた事は構わん。行動にも評価すべき点はある。だが問題は非番中に発砲した点だ。」
トグサ「そうですね、申し訳ありません・・・」
バトー「被疑者の親父は大会社の社長。弁護についた野郎はな、義体関連の訴訟で荒稼ぎしてる札付きの辞め検※1だ。気を付けろよ。」
トグサ「そうか、覚悟しとくよ。」
荒巻大輔「隔離中の接見は反対尋問の材料にされ兼ねないので、ここからの判断はお前に委ねる。」
トグサ「分かりました。それより女房の事なんですが・・・」
草薙素子「それは大丈夫よ。傍聴すると嫌な思いもするから帰った方がいいと言っておいたわ。」
トグサ「助かります。」
草薙素子「最後に一つ。分かってるとは思うけど、法廷内における一切の通信行為は禁止されている。通常波の通信だと逆探知にも引っかかるわよ。」
荒巻大輔「そろそろだな。答弁の準備をしておけ。」

ウエダトグサさん、調書ではイズミさんの肩や足に銃弾を集中させ動きを止めようと思った、と記されていますが、何故ここ迄銃弾を浴びせる必要があったのですか?」
トグサ「被疑者は義体化していて感覚器官を切っていると言っていたので、動きを完全に封じる必要を感じたからです。」
ウエダ「ほう、確か貴方、初めに犯人の動きを止めたと言っていますよね。」
トグサ「ええ、ですが犯人は銃を離さなかった。犯人から凶器を取り上げる事は逮捕を遂行する上での鉄則です。」
ウエダ「成る程、では少し視点を変えてみましょうか。トグサさん、貴方はこれに見覚えがありますか?」
トグサ「はい、それは私が勤務時に使用しているのと同じ銃です。」
ウエダ「成る程。これはマテバ社のオートリボルバーのレプリカですが、貴方の職場では全員がこの銃の使用を?」
トグサ「いいえ、他の人間はセブロM-5を使用しています。」
ウエダ「セブロM-5は5.7mm弾を最大で21発連射出来るオートマチックですよね?しかし貴方の銃はたったの6発だ。これは余りにも非効率だと思いませんか?トグサさん、この拳銃の場合弾を撃ち尽くしたらどうなるんですか?」
トグサ「薬莢を捨てて、新しい弾を装填します。」
ウエダ「私は銃に詳しくないのでご説明願いたいのですが、リボルバーとオートマチックではどちらの方が弾の交換を素早く行う事が出来ますか?」
トグサ「一概には言えませんが、大抵はオートの方だと思います。ですがリボルバーにもメリットはあります。」
ウエダ「すいませんトグサさん。質問にのみ答えて頂ければ結構です。ではこう伺いましょう。セブロとマテバではどちらの弾の装填が早く済みますか?」
トグサ「セブロです・・・」
ウエダ「ほう。そうなると貴方は任務遂行に非効率な銃を態々選んで使用している訳だ。これは貴方の仕事の性格上、極めて不自然ではありませんか?」
トグサ「確かにそういった側面もありますが、リボルバーはオートと違って弾詰まりを起こす事がありませんし、余程の事が無い限りこの装弾数で事は足ります。」
ウエダ「それは余り説得力がありませんね。現に貴方はこう言った状況に遭遇した。率直に言って貴方は自分の趣味性においてリボルバーを携帯しているのではありませんか?」
トグサ「いえ、それは・・・」
ウエダ「イエスですか?ノーですか?」
トグサ「趣味と言う事はありません。」
ウエダ「ではもう一つ質問です。貴方は勤務時間中、かなりの時間を射撃訓練に費やしていると報告書にありますが、貴方は元来射撃と言う行為に趣味嗜好を求めてはいませんか?」
検事「異議有り。トグサ氏の射撃訓練が個人の趣味による物かは弁護側の憶測に過ぎず、発言に根拠がありません。」

裁判長「異議を認めます。弁護人は本件に直接関係のある質問する様に。」
ウエダ「分かりました。ではトグサさん、確認しますが貴方はイズミ氏に発砲する際、なんと言ったか覚えていますか?」
ウエダ「覚えていないのなら教えましょう。貴方はイズミ氏に『殺されたいのか』と怒鳴った。貴方の行動の選択肢の中には被疑者を殺すと言う可能性が含まれていた。そうですよね?」
トグサ「ふざけるな!それは只の揚げ足取りじゃないか!」
裁判長「証人、席に座りなさい。」
ウエダ「事実、イズミ氏の体は四肢の関節を撃たれ」
トグサ「いい加減にしてくれ・・・俺は確かに被疑者を撃ったが、それは被害者の女性を助ける為で・・・」
ウエダ「貴方は全く反省していない様ですね。」
トグサ「話をすり替えるな!問題は」
裁判長「証人、座りなさい。」
トグサ「しかし裁判長・・・」
裁判長「座りなさい。」

バトー「どうだ、うまくいってるか?」
草薙素子「相当かっかしてるわね。あの弁護士案外遣り手だし。」
バトー「だが、トグサが被告って訳じゃねえんだから・・・」
草薙素子「休廷直前はまるでそんな勢いだったわ。」
バトー「ふむ、暗号通信は?」
草薙素子「駄目ね、自閉モードにしてる。」
バトー「接見の時の意図は伝わってなかったのか?」
草薙素子トグサは青臭いけどバカじゃない。暗号通信の意図は察知してた。」
バトー「法廷内で卑怯な手は使いたくねえって事か。」
荒巻大輔「いかんなあ、途中からこっちを一切見なくなっている。」
バトー「俺は被告の裏を洗ってくる。」
荒巻大輔少佐はこのまま傍聴を続けろ。儂は一旦本部へ戻る。」
草薙素子「分かったわ。」

ウエダ「私はトグサ氏には殺意はあったと考えている。いいですか、トグサ氏は調書の中でこういっている、『被疑者と対峙した時、一目見て男が全身を義体化していると判断した』。このトグサ氏の発言は義体者差別禁止法に抵触する発言だ。従って本件の執拗な迄の発砲もサイボーグに対する差別意識から発生していると考えられます。」
検事「異議有り。裁判長、ここでは義体者差別禁止法を持ち出すのは見当違いです。」

裁判長「異議を認めます。弁護人は具体的事実に基づいて反論する様に。」
ウエダ「分かりました。ではここでトグサ氏の特異な職場環境に言及してから、氏の具体的な行動の説明に入りたいと思います。トグサ氏の勤務する公安9課は強化義体を施した部員のみで構成された特殊な組織です。氏はりをサイボーグに囲まれた労働環境で長時間に渡り緊張感を強いられてきた為、義体化している人間に対する無意識的な劣等感と差別意識があったのではないかと思われます。その結果、今回の事件が心の闇の捌け口となってしまった。」
検事「異議有り。今の発言も根拠の無い弁護人の憶測です。」

裁判長「異議を認めます。」

バトー:課長、被告人の端末から面白いもんが見つかった。犯行前日に施術した非合法義体の内容証明だ。
荒巻大輔:それで落とせそうか?
バトー:一応根拠にはなりそうだな。
荒巻大輔バトーが得た情報を検察に回しておけ。」
草薙素子「了解。で、クスノキ検事なる男が9課を法廷に引きずり出そうとしてるっていう情報は?」
荒巻大輔「うむ。例の薬島幹事長逮捕の際に動いた男なんだが、どうやらこの件の裏で糸を引いているらしい。」
草薙素子「どういう事?」
荒巻大輔「9課の情報を嗅ぎつけたクスノキの功名心に火をつけた者がいると言う事だろう。」
草薙素子「ゴーダね・・・やってくれるわ。」

トグサの娘「ママ、パパはいつ帰ってくるの?」
トグサの妻「そうね、いつ帰ってくるかな?」

トグサ「何の用だ?」
ウエダ「貴方を民事告訴する事を考えています。」
トグサ「脅しのつもりか?」
ウエダ「先程貴方の上司である荒巻課長に連絡を取りました。流石に話の分かる方だ。貴方の民事を取り下げる代わりに義体の制御系の事故と言う事で話がまとまりそうです。」
トグサ「課長がそんな話飲む筈が無い。」
ウエダ「それならそれで予定通りにさせて頂くだけだ。そうなって困るのは9課の皆さんでしょうねえ。私はどちらでも構いませんが・・・」

ウエダトグサさん、貴方は犯人が生身の人間だった場合も何発も銃を撃ったでしょうか?」
トグサ「当然違った対応をします。」
ウエダ「成る程、では先頃起きた事件で貴方の所属する公安9課がとった具体的な対応について伺います。昨今、義体化難民による自爆テロが頻発していますが、これらの事件について公安9課はかなり密接に捜査に関わっていると伺っていますが本当ですか?」
トグサ「はい。」
ウエダ「先日の連続自爆テロ事件に関しても貴方自身が犯人逮捕に関わっていたと言うのは本当ですか?」
トグサ「はい。」

荒巻大輔「マスコミに対して情報規制をかけろ。」
草薙素子「もうやってるわ。」

ウエダ「ここにその事件に関して検察に提出された報告書のコピーがあります。この報告書によるとトグサ氏は義体化難民の自爆を阻止する際、警告を発した上で更に発砲しなかった、と記されています。何故本件の被疑者とその自爆少女とでこれだけ対応に差が生じたのですか?これは明らかに貴方の心の内に差別意識があった証拠だ。」
トグサ「待ってくれ。今回の事件でも被疑者に対して最初に警告を発している。それに彼のとった行動は全く別物だ。俺は只助けを求める被害者を救おうとしただけだ。」
ウエダ「そうかもしれない。が、それを証明する方法も無い。我々はその事で貴方を裁こうとは思わない。本件が貴方の行為によって引き起こされた事故だと証明したいだけなのです。事実、イズミ氏は連続自爆テロ事件以降、自身の義体化によりいわれの無い誤解を受ける事が増えていたそうです。その為難民と区別して貰おうと事件の前日に一目で難民ではないと分かる義手に換装したばかりだった。」

バトー「そう来るか・・・」

ウエダ「以上です。」
裁判長「一時休廷。」
トグサ「待ってください。こんないんちき公判じゃ亡くなった被害者が浮かばれません。昨日弁護人は俺と接見し、民事告訴をちらつかせ事故の線で裁判の終結を迫った。俺の職場が特殊な任務を行っている事を反対尋問の対象にする事で俺を引き下がらせようって魂胆だろうが、もうそんな脅しは効かない。何故なら、今この場で俺は9課を辞めるからだ!」

バトー「あの馬鹿・・・」
荒巻大輔「激情に駆られおって。」

トグサ「この事件は事故なんかじゃない。でも被害者を救えなかったのは事実だ。民事告訴で俺を訴えるなら好きにしろ。その代わり、俺はこの裁判から絶対に逃げないからな!」
裁判長「証人、今は休廷中です。証言は開廷後に行いなさい。」
トグサ「嫌です。これだけは言っておきたい。」
トグサ「昨今、義体の普及率に比例してこういった裁判が増えてる様だけど、その中にはある特定義体メーカーが自社の商品の不備を隠蔽する為に検察や弁護士と癒着して、不正な裁判を行っているケースもあると聞く。私は仕事柄そういった裏事情に自然と詳しくなる訳だけど、9課を辞めると決心した今、真実を全て話していくつもりだ。だからあんた達も覚悟して来いよ。」
裁判長「証人を退廷させなさい。」

荒巻大輔「入れ。」
草薙素子「遅いご帰還ね。」
トグサ「嬉しくないですね。幾ら少佐でもゴースト浸入錠を勝手に作って持ってるなんて、納得いきませんよ。」
草薙素子「お前が青臭い正義感を無意味に振りかざすからよ。」
トグサ「でもあれじゃ逆効果じゃないですか?」
バトー「安心しろ。あの後被疑者には仮の有罪が出された。」
トグサ「えっ?」
荒巻大輔「本裁判でも有罪は確定するだろう。あそこで少佐がお前に喋らせた話は被疑者の弁護士の口座を洗って見つけ出した裏情報だ。奴は自分の秘密が露呈する事を恐れた訳だ。」
草薙素子「更に、今回の件を利用して9課に揺さ振りをかけようと画策していたクスノキ検事も弁護士との繋がりがばれない内に手を引いた訳。」
トグサ「クスノキ検事ってあの・・・」
草薙素子「そう。恐らくシナリオを書いたのは内庁のゴーダ。演出がで主演が辞め検弁護士ってとこかしら。」
トグサ「そんな・・・法廷で正義を争うって意味は何処行ったんですか?」
草薙素子「残念ながらお前の正義が出る幕は最早無いのかもしれないな。」
トグサ「それじゃ被害者が浮かばれない。」
荒巻大輔「だが、天罰は下るかもしれん。」
トグサ「天罰?」

TV音声「続きまして、今入ってきたニュースによりますと、義体者差別禁止法に絡み公判の行方が注目されていた、看護士殺害事件の被告とその弁護士が、交通事故に遭い、弁護士は負傷、被告は義体を大破した模様です。」

ボーマ「この車、廃車にしといてくれ。書類も全て廃棄ね。」

TV音声「二人の乗った車は超速道路を走行中に中央分離帯に接触し横転、大破しました。弁護士の」

トグサの娘「ママ、今日はパパ帰ってくる?」
トグサ嫁「うん、もうすぐ帰ってくるわよ。」

TV音声「今夜は熱帯夜になるでしょう。」


脚注
※1:検事を辞めて弁護士になること。

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