the Cat Met with Special Boxes.

第19話 相対の連鎖 CHAIN REACTION

そうたいのれんさChain Reaction of Symmetry

粗筋

難民の行動に注目が集まる最中、ついに出島から自治区宣言がなされた。
その裏で糸を引いているであろうクゼを抑えるべく、9課は出島に向かう。
ハッキングでクゼの位置を突き止め、その場所に急行するものの、まるで9課を待ち構えていたかの様な武装難民の襲撃にあってしまう。
犠牲を出しながらも、その包囲網を潜り抜けるが既にクゼの姿はそこには無かった。
果たしてクゼは何処に消えたのか・・・


登場人物

用語

セリフ

難民1「予定通り、海上保安庁のネットを潜れたか?」
難民2「ああ。いいタイミングで穴を空けて貰っていたからな。」

若者「本物だ・・・これで戦争が出来る。」
難民1「これは戦争をする為に買った訳じゃない。戦争をしなくていい力を持つ為の武器だ。」
若者「それは同志クゼの教えなのか?」
難民1「そうだ。」
若者「俺はまだ、クゼと直に会った事もないし、ネットも出来ないから、分からないけど、彼は本当に革命家なのか?日系って言う噂も聞く。」
難民2「本当の革命家かどうかは分からんが、彼は高い志と、目的に向かって行動を起こせる実行力がある。」
難民2「よし、荷を運び込もう。」

individual episodes:相対の連鎖 CHAIN REACTION

赤嶺福岡の送電システムの内、高圧送電ライン二箇所に、同時に負荷をかけると回線が一時的に断たれます。その際、別ラインから自動的に電力供給する様、安全対策がなされていますが、そのラインに、一方向での電力供給を促す事で、過負荷の連鎖が起こり、物の数分で、首都福岡は大停電に陥ります。これは他の都市でも同様です。」
ゴーダ「遷都を目的に集められた労働者だけの事はある。難民は抜け目が無いな。」
黄村「大停電と言う方法を彼等に教えたのも、それで難民がテロを起こすと言う可能性をネットに流布したのも、彼の仕業でしょう。」
ゴーダ「成る程。彼は難民の指導者たるに相応しい。」
ゴーダ(自爆テロを思い止まらせ犠牲者の出ない方法で難民解放を指導する。この短期間に難民を手懐けた方法だけは理解出来んが、考えている事はよく分かる。君には最高のシナリオを用意しよう。)

草薙素子出島から自治区宣言がなされたらしいわね。」
荒巻大輔「うむ。」
バトー「それはクゼの仕業なのか?」
荒巻大輔「クゼ自身が姿を見せてはおらんが、恐らく間違い無かろう。奴はネットを有効に使い難民の意思をマスコミに上手く伝えている。」
トグサ「南陽新聞辺りは、難民居住区に現れたチェ・ゲバラだって書いてる。」
バトー「また姿無き英雄か。」
バトー「だが分からんのは、奴はそもそも個別の十一人だった訳だろ?難民は何故奴をすんなり受け入れたんだ?奴には少佐イシカワが調べた通り、何か特別な能力が備わってるってのか?」
草薙素子「それは奴を捕らえて直に聞いてみるしかないな。我々がこの問題と関われるのも、奴の存在があればこそだ。」
荒巻大輔「そういう事だ。まずはこの事態を減速させるべく、難民を指導していると思われるクゼを押さえろ。内庁への挑戦権を獲るのはそれからだ。」

トグサ「大分集まって来てますね。」
バトー「国民感情の反動として、難民にも一体感が出たって事もあるんじゃねえのか?」
イシカワ「こういった事態の場合、精神的に追い詰められている方が、行動も結束も早いからな。現に国民の行動は精々、行政機関へのデモ程度だ。」
トグサ「国民の総個別主義、いや、寧ろ事なかれ主義化が進んでるって感じですかね。これは難民からの宣戦布告でもあるってのに。」

難民「出島に入れろ!」
難民「橋を通せ!」

草薙素子バトー、お前達は先行して、難民がどれ位武装しているのか情報を集めておけ。こっちはイシカワと難民のネットに侵入し、クゼの居所を確認してから合流する。」
一同「了解。」

バトー「9課だ。事態は大分悪化している様だな。」
機動隊隊長「上はそう思ってないだろう。現場はいつも火の車なのにな。自衛軍に指揮権を移したくて、うずうずしている連中も少なくない。あんたらが来たのもその流れの一つなんだろう?」
バトー「これは飽く迄単独行動だ。」
機動隊隊長「ふん。紐付きから見れば羨ましい限りだな。」
バトー「リスクも自前で回避しなければならんがな。」

草薙 「まずは難民の脳をハックする。クゼの電脳は絶えず難民に解放されている様だ。奴のゴーストラインに近づく迄は、バックアップは不要だ。」
イシカワ「分かった。」

プロト「一通り調べた結果では、高倉官房長官とポセイドン・インダストリアルとの間に、金銭の流れ等は見当たりませんでした。」
荒巻大輔「そうか。待ち合わせに間に合うか?」
プロト「今の所支障はありません。」
9課オペレーター:課長。本日お会いになる予定の、外務省職員ですが・・・
荒巻大輔:どうした?何か連絡があったか?
9課オペレーター:はい。今し方新浜警察署から、地下鉄構内で列車に轢かれ死亡したとの情報が、共同通信を介して発表されています。
プロト「どういう事でしょう?」
荒巻大輔「安保の裏にも何か大きなうねりが隠れている様だな。本部に戻れ。」
プロト「分かりました。」

トグサ「聞いていた以上に活気があるな。」
バトー「難民はこの高層スラムを20年以上に渡って作り足してきたんだ。それを自分達の城だと言い出しても、おかしくは無いがな。」

バトー「こっからは二手に別れる。俺はアズマ矢野を連れて行く。そっちはパズボーマサイトートグサで行け。持ち込まれている武器の量、民兵の有無、指揮系統が既に確立されていれば、クゼを捕らえるのは相当困難だ。」
パズ「分かった。俺達はアヘン街辺りに潜ってみる。民兵が集められているとすれば、こっちの需要が増えている筈だ。」
バトー「よし。俺達は闇商人から武器の流れを探る。」
パズ「分かった。」

草薙素子「さあて、最短でクゼに辿り着くには・・・」
タチコマ少佐ー!出島内にある派出所の勤務記録に、全身義体の、しかも婦警さんが勤務中となっていますー。
草薙素子:いい仕事をしたな。映像を回せ。
タチコマ:はーい。
草薙素子:随分と所在無さげだな。
タチコマ:テロを警戒しているのでは?
草薙素子:よし、この女の電脳を借りるぞ。
タチコマ:了解ー。

警官「あんな所に座ってられると、不気味だよな。」
婦人警官「聞こえるわよ。」
警官「そう言えばさ、右腕の制御システム、初期化したの?」
婦人警官「制御系のバージョンアップなんて、するもんじゃないわよ。」
音声「本部より警備区画26、応答せよ。」
警官「お、おい・・・」
草薙素子:あれか。
警官「おい、どうした?」

タチコマ:ありました!今正にクゼと繋がっている様です。
草薙素子:よし、このルートを辿ってクゼの位置を確認する。
タチコマ:了解!

警官「全く、サイボーグって奴は・・・」

クロマ防壁迷路?ゾーニング※1で難民だけをアクセス可能にしているのか?現在位置は特定出来ないな。
タチコマ:ルートは固定されているので、出島内の何処かだとは思うのですが。
タチコマ:あ、あれですね。物凄い数の難民がアクセスしてますね。
タチコマ:なのに、フィルタリング以外特に目立った防壁は見当たりませんよ?
タチコマ:どうします?
クロマ:よし、敵に悟られる前に一気に潜る。全感覚マスクを用意。目標はクゼの視覚野。奴の視界から場所を特定する。

イシカワ:ん?個別の十一人ファイルか。
クロマ:ああ。だが今はクゼの居場所を特定する事が先だ。イシカワは第5ゲートからネットを逆送して、奴の何が難民を惹き付ける因子なのか調べろ。
イシカワ:分かった。
クロマタチコマ、マスクアレイ注入。クロマファイルでゴーストラインを越えるぞ。
クロマ:何だ・・・この重苦しい記憶のマトリクスは・・・
タチコマ少佐!急がないと、全感覚マスクがどんどん消失していきます!
クゼ:やめておけ。これ以上深く繋がると、死ぬぞ。
クロマ(もう全感覚マスクが破られたのか?)
クロマ攻性防壁は効かないわよ?
クゼ:そうじゃない。俺の意識とリンクすると不幸になると言っているんだ。
クロマ:あれか・・・ああっ!?
草薙素子「うっ・・・!」
イシカワ少佐タチコマ!何があった!?すぐに落ちろ!
タチコマ:了解!
イシカワ少佐!しっかりしろ!少佐タチコマ攻性防壁か?」
タチコマ:分かりません!でも、ウイルス攻性防壁の類は一切検出出来ませんでした。
タチコマ:僕達AIには何の影響もありません。
タチコマ:幻覚物質や興奮剤の様な物でしょうか?
イシカワ「そんな物で少佐がやられるとは思えんが。おい、少佐!大丈夫か?どうした?何を見た?」
草薙素子「妄想・・・それはいい。それよりも、奴から盗んだ情報で潜伏先を特定しろ・・・急げ!」
イシカワ「分かった。」
草薙素子「手強いな。奴は今乗っている。それに、私はあいつを知っているぞ・・・!」

クゼ:俺だ。
難民:クゼか。何かあったか?
クゼ:悪いが、暫くしたら警察か軍の特殊部隊が急襲してくる可能性がある。だが無駄に戦闘をする必要は無い。武器を隠して極力戦闘は避けろ。無駄死にはしないでくれ。

闇医者「悪い事は言わん。こっちの目玉にしなさい。」
バトー「成る程、いい出物だ。」
闇医者「だろう。出島あたりで生体パーツが買えるとは思っていなかったろうが、実際は金さえ出せば大概の物は手に入る。」
アズマ「おう、俺にも一個くんない?」
矢野「やめとけよ。」
バトー「の様だな。で、クゼもここで換装したのか?」
闇医者「換装はしとらん。あんな特殊な義体は流石に見つからん。皮膚の張替えだけだ。」
バトー「顔は?」
闇医者「顔は何処ぞの造顔作家に作らせた。口も碌に動かんワンオフだったがね。」
バトー「よくそんな知り合いがいたな。」
闇医者「あいつなら喜んで顔位作る奴はいるだろう。斯く言う私も、奴が来たらそうする口だがね、え、へへ、ははははは。」
バトー「奴は、どうやってそこ迄の求心力を?」
闇医者「ええ、さあな?私らが勝手に、奴の志のサイズに当てられているだけなのかもしれん。」
バトー「志のサイズ・・・」
草薙素子バトーバトー:何だ?
草薙素子:クゼの居所を確認した。出島北東の端にある擬装された港だ。そこに改造された漁船が停泊している。恐らくこの船に奴はいる。
トグサ:らしくないですね。100%断定では無いんですか?
草薙素子:既の所で気付かれた。こっちは今、そこの港の上空を旋回中だ。奴はまだ何処にも行っていない。奴が逃げる前に捕らえる。急いで港に集合しろ。
一同:了解。
バトー「行くぞ!」

クゼ「話はついた。いよいよ明日、我々は希望を手に入れる。」
難民「本当か?あんたなら、やってくれると思ったよ。」
難民「これでやれるぞ。」
難民「革命だ!」
難民「ははは!」
若者「あ、あんたがクゼなのか?」
クゼ「ん・・・?そうだ。」
若者「あんた、もしかして、個別の十一人の一人じゃないか?」
若者「何でお前が同志なんだ?お前等は、伝説を殺した敵じゃないか!」
難民「おい。」
クゼ「君の言う通り、俺は個別の十一人だ。」
若者「じゃ、何で皆納得してるんだ?」
難民「まあ聞け。彼には・・・」
クゼ「俺が信じられないならそれでいい。人は根本的に分かり合えない。今は、俺が理解出来ないと言う事が分かっていれば十分だ。俺の役目は、君達が俺と同じ処迄追いつけるよう、誘導してやると言う事だ。だがそれは言葉ではなく行動でしか示せない。それを見た後でまだ納得出来なければ、後は自分から降りると言う選択肢が、君には残されている。」
若者「え・・・?」

バトー:どういう事だ。少佐、三隻あるぞ。
草薙素子:恐らく外見を同じに擬装する事で、海保の網を潜り抜け易くしているんだろう。目標はその内のどれかだ。
バトー:どれか!?
イシカワ:クゼの目を盗む際に、何か攻撃を受けた様だ。
バトー:おい、大丈夫なのか?
草薙素子:ああ・・・ツーマンセルで一隻ずつ確認。光学迷彩で行く。バトートグサパズボーマ、私とサイトーイシカワアズマ矢野はバックアップを。タチコマは上を見張れ。

バトー:いねえぞ。
パズ:こっちもだ。

草薙素子「中継器?」
タチコマ「危ない!」
バトー「待ち伏せだと!?」

難民「クゼを、捕まえにきたのか・・・?」
草薙素子「何だと!?」
難民「間抜けめ・・・クゼは、お前等などに捕まらん・・・あいつは、本物の、英雄だ。」

クゼ「何故戦闘を・・・無駄に死ぬなと言ったのに。」

バトー少佐、どうなってるんだよ?こんなザマは初めてだぜ!?クゼは居ねえ!しかも只の武装難民の待ち伏せで!新人一人を死なせちまったんだぞ!?」
草薙素子「済まん・・・クゼは、最初からここにはいなかった・・・」
バトー「ん!?」
草薙素子「奴は、ロシアマフィアからプルトニウムを買い付ける為、択捉にいる。」


脚注
※1:zoning (区域内の)建築規制、土地使用区分、(郵便の)地帯制。

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