はしがおちるひThe day the bridge falls
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独立宣言に伴い、難民の熱気が頂点に達しつつある出島。 それに対し政府は、軍の出動を決定する。 そんな最中、荒巻は窮余の一策として茅葺にとある案を持ちかける。 作戦実行の為、ヘリを強奪し出島に向かう9課。 出島大橋では軍と難民達の睨み合いが続くものの戦闘状態には入っていなかった。 しかし、一発の銃声が事態を最悪の方向へと変えてしまう。
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大臣「以上が九州電波塔の爆弾処理にあたっていた自衛軍からの報告です。これで決定ですか?」 高倉「出島にはまだ10キロ以上のプルトニウムが残っている訳だからな。総理、自衛軍の正式出動を以下の要綱で発表するが、よろしいかな?」 茅葺よう子「閣議での統一見解です。私からは何も・・・」
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茅葺よう子「閣議の進行、いささか強引過ぎる嫌いがありましたね。中国政府を筆頭に、近隣のアジア諸国からあった武力行使は避けるべきとの声明は無視ですか?」 高倉「難民の受入れを拒否してきた国がこの問題に口を挟む資格は無いよ。」 茅葺よう子「ですが、近隣諸国からの軍備拡張への懸念は・・・今迄にも増して」 高倉「そういえば、米帝からも同様に連絡が来ていたよ。核の力に任せ難民が独立を勝ち取る様な前例を作ってはならない。その為にも日米安保を前倒ししてでもこの問題に共闘して取り組むべきだとね。」 茅葺よう子「それはいつ?私には何も・・・!」 高倉「彼等は親中派の貴方を信用していない。どうやら茅葺内閣は出島陥落迄と言う事になりそうだな。」 バトー「そろそろあの糞野郎も気付く頃だな。」 草薙素子「そうね。」 オペレーター「長崎自動車道のパーキングエリアに問題の車両が乗り捨てられているのが見つかりました。」 自衛官「プルトニウムは?」 オペレーター「見つかっていません。」 合田一人「そうか、止むを得んな。マスコミに知られる訳にはいかない。情報操作を優先しプルトニウムの奪還は我々の指示に従って実行して頂きたい。」 自衛官「分かっている。それは一任するが・・・」 合田一人「案ずるな。私の指示通り動けば問題ない。」 合田一人「私はこれから庁舎に戻り事態の調整に入る。」 内庁職員「解りました。」 トグサ「少佐達は今の所順調にSPring-8に向かっている様です。」 荒巻大輔「そうか。」 茅葺よう子「自衛軍の出動が正式に決定しました。官房長官の会見が7時にあり、それを以って自衛軍の出動が開始されます。」 トグサ「あと1時間足らずですね・・・」 荒巻大輔「現場では既に動きがあるだろう。」 茅葺よう子「荒巻さん。官房長官が、事態を此処迄悪化させたい目的が私には分からない。これでは状況を泥沼化するだけ。開戦すれば出島はすぐに陥落するでしょうから安保締結後の仮想敵国とは成り得ない。でもそれでは軍産複合を目指す官房長官の思惑とは一致しないと思うのですが・・・」 荒巻大輔「確かに。只泥沼化事態が目的と考えればある程度は納得がいく。難民が降服したとしても彼等が消えて亡くなると言う訳ではない。今迄の対策費が軍備に回ると言う筋道は出来上がるでしょうな。」 茅葺よう子「それはそうでしょうが、中国からの圧力も高まると言うのに・・・」 荒巻大輔「我々も掴めなかった絡繰りがまだありそうですな。どうでしょう、総理。此処は少しでも時間を稼ぐ為に国連に判断を仰いでみては。」 ボーマ「少佐。どうやらこの先で陸自が検問を敷いているらしい。」 バトー「このまますんなり行かせてくれると思っちゃいなかったが、どうする?」 荒巻大輔「少佐、儂だ。たった今国連に核査察の要請を出した。上手くいけば2日後には査察団が来日する。そのタイミングでプルトニウムが引き渡せればこの事態が収束出来る可能性は高い。それ迄逃げ切れそうか?」 草薙素子「何処かに潜伏すればね。でも査察団に会いに行くのも至難の業だと思うけど。」 荒巻大輔「なんとか上手くやれ。これが我々に残された最後のカードになるやもしれん。」 草薙素子「やるだけやってみるわ。それと本部に残っている新人達だけど、何かあった時の為にこの件に関わらない様にしておいて。此処からは私達だけでやるわ。」 荒巻大輔「分かった。手配しておこう。」 草薙素子「それと、タチコマの機体に」 バトー「どうした?」 荒巻大輔「通信が途絶えた。」 トグサ「有事法制に伴う局所的通信の規制って奴ですかね?」 茅葺よう子「そろそろ時間ですね。会場に行きます。」 トグサ「始まっちまうのか、戦争が・・・」 高倉「国連が・・・!?茅葺が呼んだのか?」 職員「はい。」 高倉「彼女を更迭する準備をしておけ。」 職員「はい。」 高倉「会見を始めよう。」 アナウンサー「自衛軍の出島封鎖に伴い近隣の地区では大幅な通行規制が行われています。」 難民「今日我々は事実上の独立を勝ち取る!」 難民「我々の要求は日本政府が出島を独立国として認める事だ!そうすれば我々は自由に貿易を行い自立して暮らしていく。それで何がいけないのか!?」 難民「我々には核がある!日本政府はその事実を認めた!これは同志クゼの行動の賜物だ!従って彼を放逐する事はありえない!」 高倉「尚攻撃開始迄の期限は2日。国連の核査察団の到着を最終期限とし、それ迄に難民からの回答が為されなかった場合には一次攻撃を開始する事になるだろう。以上だ。」 ボーマ「ふん。」 バトー「始まったな。」 草薙素子「課長との連絡も途絶えた今、我々は独自の判断で動くしか無くなった訳だが、此処からの作戦に参加するかどうかはお前達の自由意志に任せる。」 タチコマ「おおー。」 バトー「おい!なんだよ?独立愚連隊は今に始まった事じゃねえだろ。自衛軍相手に逃亡劇を演じるんじゃねえのか?」 草薙素子「いや、このままプルトニウムを持って出島に潜入する。」 バトー「出島だと?」 草薙素子「自衛軍の進攻に乗じて一気に出島に潜入する。どの道査察団も出島に来る。ならばそれ迄にクゼを捕らえプルトニウムとセットで引き渡す。」 サイトー「少佐らしくて呆れるしかないが、俺は従うぜ。」 パズ「俺も構わない。」 ボーマ「当然俺も。」 バトー「俺も異論はねえが・・・」 草薙素子「反対か?」 バトー「いや、スリルと引き換えに給料分の仕事はしてやるよ。」 草薙素子「ふっ。決まりだな。」 アナウンサー「長崎市外では、軍による大幅な通行の規制が・・・に伴いまして各国内便は全面・・・そういった意味では、今回の政府の決断は」 イシカワ「ふう・・・」 草薙素子:イシカワ、状態はどうだ? イシカワ:ああ・・・少佐か。まだこのザマだ。 草薙素子:まあ、たまにはそんな休暇があってもいいだろう。と言いたい所だが、頼みがある。 イシカワ:なんだ?出来る事ならなんだって手伝うぞ。 草薙素子:今、お前の所にタチコマを1機向かわせた。タチコマのポッドには電波塔から回収したプルトニウムの半分が入っている。そいつを持ってSPring-8に向かえ。 イシカワ:成る程、そういう事か。そいつは構わないが、そっちはどうする? 草薙素子:我々は残りのプルトニウムを持って出島へ向かう。 イシカワ:出島だと?また随分と無茶な手を思い付いたな・・・トグサは? 草薙素子:課長と首相官邸だ。 イシカワ:そうか。そっちに参加出来なくて済まんが、無理はするなよ。空爆でも始まれば、どうなるか分からんからな。 草薙素子:ああ。お前も気を付けろよ。 イシカワ:こっちは任せろ。 草薙素子:頼んだぞ。国連の査察団にプルトニウムを渡す時のニュース映像で会おう。 イシカワ:死ぬなよ、少佐。 バトー「なあ、少佐。」 草薙素子「ん?」 バトー「一つ聞いていいか?」 草薙素子「なんだ?」 バトー「お前の外部記憶を使ってゴーダと話した時、悪いと思ったがクゼについての記憶を覗かせて貰った。」 草薙素子「で?」 バトー「別に何かを見たって訳じゃねえんだが、クゼに特別な感情がある様だな。奴の脳に潜った時何があった?」 草薙素子「別に何かあった訳じゃない。だが奴の記憶に触れた時、昔に別れた誰かの様な気がしてな。」 バトー「昔別れた?」 草薙素子「ああ。でももう随分前の話よ。」 サイトー「そろそろ到着するぞ。」 難民「戦車は本当に攻めこんでくるのか?」 難民「こっちは自爆だって辞さない覚悟だからな。」 難民1「同志クゼは何もするなと言っているだろう。こっちからは絶対に手出しするな。そうすれば国際世論が我々に味方する。この戦いは戦わずして我々が勝利する。ちゃんとクゼにネットしておけ。」 荒巻洋輔「お前、クゼ・ヒデオだな?」 クゼ・ヒデオ「貴方は?」 荒巻洋輔「一度向こうで見かけた事があってな。※1」 クゼ・ヒデオ「そうですか。」 荒巻洋輔「台湾では大勢の人間に取り囲まれておったが出島ではお前の顔を知る人間は少ない様だ。」 クゼ・ヒデオ「此処は電脳化している住民が多かったので。」 荒巻洋輔「成る程。それで難民達に思想は伝播している訳か・・・尤も、300万人からの問いかけに答え続ける精神力を持っていてこそ出来る神業ではあると思うがね。」 クゼ・ヒデオ「でもそこに落とし穴もありました。」 荒巻洋輔「落とし穴?」 クゼ・ヒデオ「そうです。水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる。」 荒巻洋輔「ほう・・・」 クゼ・ヒデオ「思想ウイルスを乖離し、出島に戻った俺に、難民の多くがすぐに結線し始めました。俺はその時から、彼等の意思を重視し彼等の望みを叶える為に助力する事だけを唯一の行動原理と決めた。それで彼等のリーダーになる事は然程難しく無かった。それ以外の意識にはフィルタリングをかけ、絶えず結線してくる難民の意識を俺の抱く理想と並列化出来る様に努める。俺は大戦直後、ユーラシアを彷徨しシステムの中の個人の存在意義を捜し求めた事がありました。その途上、人は本来他者の介在があって始めて存在し得る物だと言う事を難民に教えられた。」 荒巻洋輔「自分の義務と権利を秤にかけて権利に先に錘を乗せなくば、社会の規則に従いしも自身を失う事無し。」 クゼ・ヒデオ「はい。その普遍的な思想がとても口当たりの良い物に感じられました。しかしその難民も、一度ネットを介しヒエラルキーの上層の存在を知ると、その事を忘れ皆低きに流れていってしまう。力を持てばそれを誇示したくなる。武器を持てば一度は使ってみたくなるのと同様に。」 荒巻洋輔「それが分かっていて何故事態を此処迄引っ張った?革命等と言う世迷い事が簡単に成就出来ると本気で考えていたのか?」 クゼ・ヒデオ「いいえ。俺の考える革命はもう少し先にある。今はその革命のゴールである上部構造に人々を向かわせる為の前段階だと考えています。」 荒巻洋輔「上部構造?それはヒエラルキーとは違うのか?」 クゼ・ヒデオ「ええ、違います。今この地上を覆い尽くさんとしているネットワークは、既に下部構造と化し本来の目的を終え別儀を創造している。そこからは不可分ながら土台たる下部構造に対し確実に新義ある反作用を及ぼす存在となり上部構造へとシフトする。それが俺の考える革命の定義です。」 荒巻洋輔「よくは分からんが、それを難民と共有する事は出来るのかね?」 クゼ・ヒデオ「潜在的には共有している筈ですが、具体的にはまだ。」 荒巻洋輔「儂も他人への興味から野に下った人間だ。その老いぼれから一言言わせて貰うなら、今は理想より現実を優先するべきだ。お前ならまだこの事態を止められる。」 草薙素子「タチコマ。もう一度クゼの電脳に潜る。バックアップを。」 バトー「大丈夫なのかよ?」 草薙素子「結線自体は難しくないが、奴がこっちのメッセージを受け取るかどうかが問題だ。」 職員「代表。大村駐屯地より出動命令に無いヘリが1機飛び発ったとの報告が入りました。」 合田一人「見つけたな。全くもってシナリオ通りの動きだ。BP-3Cの配備はどうなった?」 職員「はい。既に出島上空に到達しているかと。」 合田一人「よし。まずはそこからだ。出島一帯にジャミングをかけ難民をスタンド・アローンにする。そうすれば難民は勝手に暴走を始める。」 タチコマ「ネットが断線しますねえ。」 タチコマ「出島で通信障害が起きている様です。」 草薙素子「防壁アレイスタンバイ。一気にメッセージファイルを打ち込め!」 タチコマ「了解!」 クゼ・ヒデオ「何・・・!?」 荒巻洋輔「どうした?」 クゼ・ヒデオ「此処に来るだと?しかもプルトニウムを持って・・・」 荒巻洋輔「なんの事だ?」 クゼ・ヒデオ「ネットが断線している・・・自衛軍のジャミングか。」 クゼ・ヒデオ「難民を孤立させるつもりだな。」 難民「戦車が攻めてくるぞ!」 クゼ・ヒデオ「どうやら政府には俺と同じ考えをしている人間が居るらしい。」 クゼ・ヒデオ「俺は大橋のバリケードに向かいます。戦闘が始まる可能性が高い。貴方の様な人は死んではいけない。可能なら出島から脱出して下さい。」 荒巻洋輔「お前こそ死んではいけないよ。まだ出来る事は有る筈だ。」 クゼ・ヒデオ「だといいのですが・・・」 草薙素子「どうだ?」 タチコマ「断線寸前で転送は完了しました!」 草薙素子「よし!」 難民「糞う・・・やってやる!」 難民「当たった!」 隊員「撃たれたぞ!援護しろ!」 アナウンサー「銃声です!戦闘でしょうか!?」 隊長「撃つな!向こうには核があるんだぞ!」 合田一人「水は低きに流れ、人の心もまた低きに流れる。」 バトー「どういうこった?戦闘が始まったらしいぞ。」 難民「やはり戦車がくるぞ!橋を落とせ!」
ボーマ 自衛軍 米帝 第16話 そこにいること ANOTHER CHANCE タチコマ 電脳 パズ SPring-8 リン 草薙素子 少佐 合田一人 内庁 茅葺よう子 陸自 第22話 無人街 REVERSAL PROCESS 高倉 サイトー クゼ・ヒデオ 荒巻大輔 イシカワ トグサ 防壁アレイ 荒巻洋輔 第24話 出島、空爆 NUCLEAR POWER 招慰難民 水 ウイルス 出島 電脳化 陸上自衛軍 拡張 バトー