the Cat Met with Special Boxes.

【蟲師】瞼の光

まぶたのひかりマブタノヒカリ

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瞼を閉じた時に見える、闇の中の光。
そして、ふたつめの瞼を閉じた時、上の方から本当の闇が降りてくる。
ふたつめの瞼に棲むが光を奪うと、そこには本当の闇と光の河が流れる。


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およそ遠しとされしもの。
下等で奇怪、見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。
それら異形の一群を、ヒトは古くから畏れを含み、いつしか総じて「」と呼んだ。


ビキ「おはよう、スイ。」
スイ「おはよう、ビキ。」

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ビキ「今日はどう?目は、まだ痛む?」
スイ「ねぇ、ビキ。」
ビキ「ん?」
スイビキには教えてあげるね。あたし、知ってるの、この病気の原因。」
スイがいるのよ。棲んでるの、ずっと、あたしの目の中に。」

スイは本家の末娘で、半年程前、光が当たると目が痛むという病を患った。
それは、どこの眼医にも原因の分からぬ奇病で、治療法も見つからない内に、僅かな光も酷く痛がる様になっていった。
その為、より光を遮る丈夫な蔵のある僕の家に、一人預けられたのだ。
それは、スイの為だったのかもしれないけど、僕には、スイがここに捨てられて行った様に見えた。

スイ「瞼の裏にね、もう一つ瞼があるの。」
ビキ「え・・・?」

スイ「そこは、絶対に外の光が届かない所で、はそこにいるのよ。」
ビキ「二つ目の瞼?」
スイ「そうよ。ビキは閉じ方知らないの?じゃあ、教えてあげる。目を閉じて。」
ビキ「うん。」
スイ「何か、見える?」
ビキ「んーん、何も・・・あっ、でも・・・なんかチカチカした物が、目の中動いてる。」
スイ「でしょ?一度瞼を閉じても、目はまだその瞼を見ていて、本当には閉じていないの。」
スイ「だから、本当の真っ暗闇が欲しい時、そのチカチカを見ている目玉を、もう一度閉じるの。」
スイ「そうしたら、上の方から、本当の闇が降りてくる。」

ビキ「できないよ・・・」
スイ「そお?ビキって不器用ね。」

僕達は、深い闇の中で遊ぶ。
蔵の中へ入ってすぐは、本当に何も見えないけど、しばらくすると、闇の向こうから物達が自ずと輪郭を現してくる。

ビキ「どうして見えるんだろう?真っ暗なはずなのに。」
スイ「地面の下に、光の河が流れているからよ。」
スイ「二つ目の瞼を閉じると見えるよ。ずーっと本当の闇を見ているとね、遠くの方から光の粒が見えてきて、それがどんどん洪になるの。」
スイ「その光はよく見ると全部小さなでね。でも、もっと近くで見ようとして近づくと・・・」
ギンコ「駄目だ。」
ギンコ「それ以上、その河には近づくな。」
スイ「会ったこと無い知らない人よ。片目の男の人が、いつも河の向こう岸に居てそう言うの。だから、いつも少し遠くで眺めているの。」

僕は、時々ふと不安になる。

塞がれた目で、スイが見ているもの達は、一体・・・一体、なんなのだろう。

ビキの母ビキ!あんたいつも蔵の中に長く居過ぎだよ。」
ビキ「ちゃんと取り替えた眼帯は焼いて捨てたよ。手も、食器も消毒したし。」
ビキの母「それでも、伝染しない保証なんて無いんだよ。」
ビキ「本家の人達も、それが怖くて、スイを見放したんでしょ?」
ビキ「だから僕らは・・・」
ビキの母「分かってる・・・それはそうよ。あの子はいい子だよ、とても。母さんは堪えなきゃいけないね。」
ビキの母「あの子が心の中まで光を失ってしまわない様に、付いててあげるんだよ。でも頼むから、お前まであの病になってしまわないで・・・」

スイ「ほんと・・・?ここへ・・・来てくれるの・・・?」

ビキ(なんだ・・・?今の・・・)
ビキ「まさか・・・違うよ・・・違うよ・・・母さん・・・」

ビキの母ビキー、まだ寝てるの?」
ビキの母ビキ!」

スイビキ?」
スイビキ。」
スイ「どうしたの?」
ビキの母ビキは・・・もう、越させないわ。貴方の病気、あの子に伝染したの。」
ビキの母「貴方が、悪いんじゃないわ・・・他人に情けなんか掛けたのが悪かったのよ。」

ビキの母「誰!?雨戸を開けたらビキが・・・!?」
ギンコ「大丈夫ですよ。」
ギンコ「こちらはこの道の専門ですから。治療薬と鎮痛剤を与えておきました。闇に閉じ込めておくと、病気は悪化する一方ですよ。」
ビキの母「あなたは、何者なんです?」
ギンコ「ああ、こりゃあ失敬。蟲師ギンコと申します。蔵の娘の事を風の噂に聞きましてね。」
ギンコ「あれは眼医ではなく、我々蟲師に回して貰わねば治りませんよ。」
ビキの母ビキは、この子は治るんですか・・・!?」
ギンコ「ああ、そっちのは孵化直後みたいです。薬に依る治療だけで、恐らく効くでしょう。」

スイビキ・・・ビキ・・・ビキ・・・ごめんね・・・ごめんね・・・ごめんね・・・)

ビキスイ!」
ギンコ「目が覚めたか。」
ギンコ「目は、まだ痛むか?」
ビキ「ん・・・んーん・・・」
ギンコ「よし、効いたな。スイの病気の原因は、マナコノヤミムシというでな。闇を通して繁殖する。」
ギンコ「お前はスイと闇を共有し過ぎたんだな。」
ビキスイを知ってるの?」
ビキ(片目・・・)
ギンコ「二つ目の瞼を閉じる度、あの子が対岸に居た。」
ビキ(あれ・・・?)
ギンコ「あの光の河は、地上の光とは異質なもので出来ている。あまり近くで見過ぎると、目に毒だ。」
ビキ(左目がある。スイが言ってた片目の人とは違うのかな?)
ギンコ「日が落ちたら、スイの治療を始める。」
ビキ「うん。分かった。」

ギンコ「ん!?」
ギンコスイ。お前、あれ程あの河には入るなと言ったのに。」

ビキスイ・・・」
ギンコスイの目玉はもう死んでる。」
ビキ「えっ・・・?」
ギンコ「だが、なんとかはしてみる。二つ目の瞼は、長い時間閉じ過ぎると、闇に目玉が食われるんだよ。」
ギンコ「じゃあいいか?スイ。月の光でをおびき出す。二つ目の瞼を閉じたまま、目をゆっくりと開くんだ。」
ギンコ「出てこい共。光だぞ。」
ビキ!?」
ギンコ(いた!)
ギンコスイ、いいぞ。目を閉じろ。」
ギンコ「これでいい。さて、あとはスイの目玉だが・・・」
ビキ「む・・・だ・・・ほんとに目の中にむ、が・・・」
ギンコ「やはりもう使い物にならんな。上手くいくかは分からんが・・・」
ビキ「えぇ・・・!?」
ギンコ「これを、スイにやる。君、さっきから驚き過ぎ。まぁそう焦るな。義眼だよ。」
ギンコ「これはさっきの液状のだ。これをき込めば、ただのガラス玉も、眼球として生命を持つはずだ。」
ビキ「あの、聞いていい?貴方達が見ていた、光の河の正体って、一体、何・・・?」

二つ目の瞼を閉じてごらん。

ギンコ「お前は、忘れてしまったのか?」

すると闇への通路が開く。

ギンコ「お前も昔は、あんなだったじゃないか。」

人間は光を手に入れた頃から、二つ目の瞼の綴じ方を忘れたのだという。
がそれは、生きるものとしては良かったのかもしれない。
かつて人間は、そのものを見過ぎたばかりに、目玉を失う者も多かったというから。
二つ目の瞼、本当の闇、異質な光。
我々の足の下を泳ぐ無数の生命、そのものの群れの事。

ボンってりが明るくなったと思ったら、その後一瞬真っ暗闇が来て、足の下が抜けて、ずーっと下の方に、光の川が流れてるのが、見えたんだ。
あの蟲師さんが、スイに目玉を入れた後の、ちょっとの間だけど。
凄く綺麗で、体が引き込まれるみたいで、ずっと見てたくなった。

スイ「できたよー。」

スイは蔵を出た。
木々や、花や、光をたくさん見る。
もう、暗闇の中で、あの不思議な光に魅せられる事もないだろう。
あの人も、スイと同じ様にして、本物の片目を失くしたんだろうか?



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