すずのしずくスズノシズク
粗筋
カヤが生まれる十ヶ月ほど前、山は祝福するような鈴の音で包まれた。 光脈筋にある山を歩いていたギンコは、その山のヌシの視線を感じて辺りを見回す。 暫しして、木の上に影を発見するが、なんとそれは人をかたどっているようだった。 ヌシの道を辿り調べにいったギンコは、山の深い所でムグラノリを終えて倒れこむ少女を発見する。 その衰弱ぶりに、滋養の薬を勧めるギンコだったが、”ヌシ”は話しかけてくる彼を拒絶し、去れと命じる。 山を出たギンコは、そこで行方知れずの妹カヤをずっと探し続けている葦朗という青年に出会う。 カヤは生まれた時から頭に草が生えており、歩くようになると度々一人で山に出かけた。 彼女は不思議なほど山に詳しかったが、時々意識がどこかにいってしまうような事があり、そしてある日、ふっつりと姿を消したまま今に至るという。 ギンコは葦朗に妹のことは諦めるように言う。 あんたの妹はもう里には戻れない、ヌシに近づいては山そのものが崩れてしまうぞ、と。